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岡本信一の科学する農業

土壌の物理性から考えた「良い土壌」

前回に引き続き、「良い土壌とはどんな土でしょうか」という話題について、もう少し深く見てみよう。 この連載で書いてきたとおり、土壌の物理性は収量や品質と密接な関係がある。今回は、一般的に良いと言われる土壌とは何か、作物の成長とどのような関係があるのかを少し踏み込んで考えてみたい。
土壌の物理性というのは、ズバリ土壌の硬さのことである。単純に柔らかいか、硬いかが問題ではない。重要なのは、深くなるにつれて、どのような硬さに変化していくのかという問題である。言い換えれば、硬くなり具合といったところだ。
では、どのような硬くなり具合が良いのか。一般的には、「深くなるにつれて徐々に硬くなっていく土壌」がその答えになることがわかってきている。もちろん、細かく見ていくと作物別、栽培目的別に最適な条件は違うのだが、一般論では徐々に硬くなっていく土壌が作物にとって良い条件であるのは間違いない。
しかし、現実的にはほとんどの土壌には耕盤層があるため、表面から耕盤層までは非常に柔らかく、耕盤層で極度に硬くなっている。こういった土壌では作柄が安定しにくい。
そこで、なぜ徐々に土壌が硬くなっていくのが良いのか考えてみる。大部分が推測で、今後、検証が必要な話題を多く含むことをあらかじめ断っておく。

なぜ深くなるにつれて硬くなる土壌が良いのか?

自然状態では、表面が柔らかく、深く掘っていくと徐々に硬い土壌になってくる。例えば、森の土壌で考えてみよう。落ち葉などが積もっている表面にある土壌は、腐植化し始めた土壌で比較的柔らかい。その下には、有機物が腐植した層があり、表面の土壌に比べて少し硬い。深くなるにつれて、上からの重量によりさらに硬くなり、場合によっては岩盤に当たることもある。
基本的な土壌の組成は、植物の葉などを中心とした有機物が、長年にわたり堆積してきたことによるものも多い。多くの植物はこのような土壌で進化してきているわけで、徐々に硬くなる土壌を好む作物が多いというのは、納得できる部分だろう。
次に、土壌の硬さは根の張りに大きな影響を与えるということに触れたい。柔らかければ根は張りやすいし、硬ければ張りにくい。作物の養分吸収という観点から見ると、水と一緒に吸収できる栄養分は、細かい根を必要としない。しかし、土壌に吸着しているリン酸などは、根毛と呼ばれる非常に細かい根からの吸収に頼っている。根毛は目に見えないほど細かい根で、非常に酸素の要求量が大きく、酸素不足になるとすぐに消失してしまう。そのため根毛は土壌の表面に近い、酸素の多い部分に集中して発達する。
土壌が柔らかいと普通、土壌孔隙が大きく酸素が多いので、根毛の発達のためには柔らかいほうがいいということになる。とはいっても、柔らかければいいかというとそうとも思えない部分がある。根には体を支える役目もあるからだ。

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