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お土産にいただいたジャム。カシス、ハックルベリー、そしてコクワ。どれもとても上品なでき上がりだ。とくにコクワのジャムを食べたのは初めてで、その素朴な味わいに感動した。
医久子によれば、コクワはリンゴのペクチンを加えてジャムにする。コクワだけではペクチンが含まれていないのでジャムにならないのだそうだ。ハックルベリーは完熟したときに収穫し、あえてペクチンを加えずにとろとろのまま商品化する。完熟するまでは苦味があり、食べられない。さらに、マルメロは芯の部分にペクチンがあり、芯の部分だけを煮詰めた後、マルメロの実を混ぜてジャムにする。その他、キイチゴなど、どの原料も完熟したものだけを収穫するのに多くの手間を要する。カシス以外は、山に自生したものを高齢者の手をわずらわせて採ったり、村人が庭に移植したものを集めたりして加工している。試行錯誤を繰り返しながら、可能なものは少しずつ畑での栽培を始めている。
取り組んでいる加工品はどれも他にあまり例のないものばかり。栽培品種もあるが、西和賀の風土のなかにある産物だ。しかし、困難な分だけ未来に可能性が感じられる。
ワラビの里づくり
岩手と秋田の県境の山郷である西和賀は、良質な山菜の里として有名で、駅前や街道沿いの商店には春から秋までさまざまな山菜が並ぶ。それを目当てに訪ねる人も少なくない。かつては、年寄りたちだけでなく、春から秋までの休日には山に入って山菜を採り、自家用として消費するだけでなく、温泉旅館や駅前の商店に卸すアルバイトをする人がたくさんいた。なかには、それが本業以上の稼ぎになるという人も知っている。しかし、いまでは高齢化が進んで山に入る人が減り、そのために山が荒れてきているという。山菜も人が山に入ればこそその豊かな恵みは守られてきたのだ。それどころか、かつては入会権で守られてきた里山の山菜も、それを主張することもなくなってしまった。いまではよその人が山に入って山菜を採り、駅前や旅館に卸すようなことにもなっているそうだ。
西和賀町では15年くらい前から水田転作としてワラビが導入されている。高橋も02年からワラビの生産を始め、いまでは3haまで拡大した。観光客を呼び込み、ワラビとアスパラガスの摘み取り体験をさせている。それが宅配の顧客づくりにもなっている。もともと西和賀は良質なワラビの産地として知られているからだ。
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高橋明 タカハシアキラ
やまに農産(株)
常務取締役
1953年、岩手県湯田町生まれ。73年に宮城県立農業短期大学を卒業後に就農。2010年、妻の医久子を社長にしてやまに農産株式会社を設立。水稲、リンドウ、ユリなどの生産を経て、現在は17haの水稲経営と観光ワラビ園、観光アスパラガス園などを経営する。ワラビ粉の生産も行なっている。
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