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しかし、観光ワラビ園も5年もすれば更新しないとやせワラビばかりになってしまう。
植え付けはティラーで溝をつけ、そこにワラビの根を植え付けるだけで済む。収穫は2、3年後だが、それ以上になるとやせワラビが増えてくる。そのために肥料を与えるが、そうすると雑草のほうが元気になってワラビに勝ってしまう。除草剤も使えず、ワラビ栽培は草との戦いになるのだそうだ。
そんな試行錯誤のなかから、やまに農産では5年ほど前からワラビ粉の生産に取り組み、3年前からわずかながらの出荷を始めている。最初は更新を兼ねて澱粉が採れればいいという思いからだった。更新のために掘り取ったワラビの根を洗ってまな板の上でたたいて砕き、ほんのわずかなワラビ粉を採ることから始まった。
5年育てたワラビはバックホーでなければ掘り出せない。しかし、ワラビ粉を採る目的の畑では、条間をトラクターが入れるくらいに開け、ロータリーハローで除草するという栽植形式にする。2、3年のワラビであればディガーで無理なく掘り上げることができる。
ワラビ粉は地上部でなく、根のデンプン(根花と呼ばれる)が肝心。その収量を最大化し、デンプン価を上げるための栽培方法もこれからの研究課題だ。
11ページの写真4~9はワラビの収穫と加工の一連の写真である。
いままでは秋に草が枯れてからバックホーで収穫していた。洗浄もこれまでは川で行なっていた。保健所にお伺いを立てたところ、とくに問題にされなかったが、雪の季節に川に入る重作業であることも考え、いまでは高圧洗浄機で大方の泥を洗い流し、ダイコン洗浄機を改造した機械で洗浄する体系にしようとしている。その後、小型のサイレージカッターで4、5cmの大きさに切り刻んで粉砕する。それを高速ミキサーでさらに粉砕し、ドロドロしておがくず状にして。ろ過、沈殿させれば澱粉がたまる。
こうして沈殿したものは、デンプン層と不純物の混じったデンプン層、そして泥の三つの層になる。不純物の混じったデンプン層をさらに撹拌・沈殿させてデンプンを取り出す。
生産規模が小さいため、大型の機械を導入できず、ろ過作業はすべて手作業であるために効率が悪い。泥と澱粉を分離する遠心分離機を機械屋さんと研究し、ジャガイモ澱粉の機械を小型化したようなものを作ろうと考えている。
やまに農産としても菓子製造業の免許は取っており、お菓子作りや総菜の設備も整えている。それでも、菓子作りは専門家に任せたい。現在、我が国でワラビ粉として流通しているのは、ほぼすべてが中国製。やまに農産以外の生産者は九州に一社があるだけだ。宣伝すれば高値で買ってくれるところもあるかもしれないが、まずは町内の三軒のお菓子屋に供給する。その三軒のお菓子屋だけでも生産が追いつかない。
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高橋明 タカハシアキラ
やまに農産(株)
常務取締役
1953年、岩手県湯田町生まれ。73年に宮城県立農業短期大学を卒業後に就農。2010年、妻の医久子を社長にしてやまに農産株式会社を設立。水稲、リンドウ、ユリなどの生産を経て、現在は17haの水稲経営と観光ワラビ園、観光アスパラガス園などを経営する。ワラビ粉の生産も行なっている。
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