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特集

裏読み農協改革



危機感強めた農協系統
株式会社米穀新聞社 記者 熊野 孝文

「農協改革はコメにどういう影響があるのか話してくれないか」
こんな依頼が筆者のところに一度に4カ所から届いた。コメ業界でもこれほどまでに関心が高いということの表れだろう。さっそく筆者なりに今回の農協改革とコメとの関連について情報収集に当たった。

【コメ業界への影響は
広範囲を想定】

ここでは、農協改革がコメにどのような影響を与えるのかに絞って予測される事態を示してみたい。取材した農協関係者には「それほど大きな影響はないだろう」とする組合長もいたが、商社や識者はかつてない大きな変化が起きると予想している。その影響は多岐にわたると見ており、コメビジネスそのものに変化が起きるとの読みで「勝負はここ1~2年」と言い切る商社の幹部もいた。
なぜそれほど大きな変化が起きるのか? 端的にいえば、最大の要因は農政をめぐる権力構造が大きく変化したからである。コメは政治物資で、この構造は食管法が廃止されても変わっていなかった。そのことは2007年産で農水省は出口対策をやらないと言っていたにもかかわらず、政治的圧力に屈し、緊急に30万tを政府買入れしたことや米政策大綱が大きく後退したことでも明らかである。
しかし現在、農協改革に関係なく農政全般の改革は官邸が主導している。事情通によると、「全省庁には153名の局長がいるが、全員官邸を見ている」という。農水省も同様で、農協改革の法案づくりでは「俺に法案を書かせてくれ」と多数のキャリアが手を挙げたそうだ。そうして書かれた法案には至るところに地雷が仕掛けられており、農協系統にとって極めて厳しいものになるとのことだ。

【飼料用米増産計画も赤信号、
これ以上の財政負担は無理】

事例を一つ挙げると、本年産米で最も注目されているのは飼料用米増産である。転作作物として飼料用米を増産し、主食用米の生産量を減らして需給を均衡させようという取り組みだ。
全農は、60万tの飼料用米生産計画を立て、それを買い取るといういわゆる「全農スキーム」までこしらえた。この全農スキームに対して農水省は、水田活用米穀の枠内のコメであればいかようにでも転用できるというお墨付きまで与えて全面支援している。しかも、その助成金たるや10a当たり数量払いで最高10万5000円、専用品種で1万2000円、農畜産連携で1万8000円、その他産地交付金の支給など大盤振る舞いで、産地の中には飼料用米を生産すると10a当たり15万円の助成金がもらえるところもある。仮に10俵採れたとすると1俵1万5000円になり、主食用米よりはるかに手取りが良くなる。こうした常識では考えられないような飼料用米に対する多大な助成金に対して、財務省からは「農水省はコメの新たな政策としてマーケットインの発想でのコメ生産を掲げたはずだが、これではその政策に逆行する」というクレームを付けられた。

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