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特集

裏読み農協改革



【コメの新たな市場の誕生、
生産構造の大きな変化】

農水省主催の「コメの安定取引研究会」が3月10日に発表した「骨子案」に「現物市場」の文言が盛り込まれたのは農協改革とは無縁ではない。
昨年12月から始まったコメの安定取引研究会では、出席委員からコメの価格を安定させるためには「先渡し市場」も必要ではないかといった意見も出たが、こうした意見は無視され、全農の概算金の基準を決めるような場になってしまった。いわば本末転倒に議論が展開されていたのだが、内閣府から民間のコメ市場活性化について「2018年度までに代表的銘柄を含む指標性を持つ、例えば100万t以上の規模のものへ育成。コメの安定取引研究会においてこの具体的な政策手法を明示せよ。先物市場についても本上場に向け検討を進めよ」という意見書が出された。この意見書が農水省のコメの安定取引研究会の骨子案に「現物市場」の文言が盛り込まれた要因になった。
こうした一連の流れがあってコメ卸業界の団体である全米販が3月23日に新しいコメの現物市場設立の記者発表会を行なうことになった。この発表会では公にされなかったが、水面下ではITを活用したコメの先渡し市場のシステムが完成している。画面上のスクリーントレードを基本にしたこの取引市場はパソコン上で現物だけではなく、6カ月先の売買も可能で、先物市場とは違って、売り手も買い手も自らが求める銘柄、スペックのものが売買できるため、市場機能が飛躍的にアップする。同時にそこで成約したものを先物市場にヘッジすることも可能でリスクが軽減される。言い換えればコメがコモディティ化する時代が来たということもでき、農協改革はそれを推進するために官邸が主導したといえる。

農協組織が恐れていたのは
協同組合の株式会社化だった
農業ジャーナリスト 土門 剛

今回の農協改革でお手本にすべきものがあった。2012年の英国・改正協同組合法だ。
英国にも、組織基盤を異にする協同組合がいくつかある。生協、農協、信用組合、共済組合などだ。それらをひとつに統合するのが、法改正の目的だった。同年1月、法案を議会に提出するにあたり、英国首相府が法改正の意義をこう説明した。
「改正協同組合法案は、協同組合が組織の中にはびこる官僚主義と決別して、より公正な競争にもとづく経済を築き上げる。いやむしろ多くの協同組合が企業経営による(手法の)恩恵を分かち合うことになる」

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