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特集

裏読み農協改革


残念ながら、そのような説明はもう通用しない。協同組合を取り巻く社会や経済の基盤が大きく変化したからだ。そんな記述を掲げる前に、農協が扱う購買品が、ホームセンターよりなぜ高くなるか、その釈明をまず組合員にすべきだ。
それよりも19世紀に産声を挙げたロッジデールやライファイゼンという協同組合の理念が、ボーダーレスなグローバル経済の時代には、もはやセピア色になりつつあることを認識すべきではないかと思う。ロッジデールとは、英国の地名で生活協同組合の発祥の地を指す。ライファイゼンは、ドイツの信用協同組合の創始者の名前だ。
会社法に限りなく接近した協同組合法の改正が、協同組合発祥の地・英国で実現したことは、実に意義深い。理念先行の19世紀型の協同組合が完全に通用しなくなったことを証明しているようでもある。
それを証明するのが、協同組合の対応だ。英国には、協同組合を束ねる英国協同組合中央会という組織がある。ここのエド・メイヨー事務局長が、英国政府が改正協同組合法案を提出したときに、キャメロン首相と一緒に談話を公表している。「ダウニング街10番の首相官邸から」という公式文書の中にメイヨー事務局長の談話がある。
「(同法案で)協同組合の事業を(企業などと)同じ競争条件の下にさらし、多様な経済を創り出すことを嬉しく思う」
「同じ競争条件の下」、原文では「イコール・フッティング」という表現を使っている。英国・改正協同組合法の特徴は、明田客員研究員の論文では、こう整理されている。

【第一】経済グローバル化のもとでの競争条件を確保する観点から協同組合の制約をできるだけ緩和する必要があるとの要請である。
【第二】イコール・フッティングの観点から、種々の企業形態に適用される一定の法律を国のレベルで統一化をはかる狙いによるものである。
【第三】グローバリゼーションのもとでの国境を越えた協同組合法の調和化や統一化、資本主義社会の代表的な企業形態である会社法におけるガバナンスの仕組みや資本構造への右倣えといったことである。

こうしたキーワードを連ねていけば、「経済のグローバル化」、「イコール・フッティング」、「国境を越えた協同組合法の調和化や統一化」になり、協同組合の組織基盤も「会社法におけるガバナンスの仕組みや資本構造への右倣え」という今日的な流れにしていく。
明田客員研究員の論文が示す法改正の主要点を表にしてみた。協同組合を否定したものではなく、経済の変化に合わせた協同組合の可能性を実現するプラットフォーム(基盤)を同時に用意しており、会社法の大きな特色である「コーポレート・ガバナンス(企業統治)」の考え方を随所に取り入れたことは、当然の帰結である。

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