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特集

裏読み農協改革


今回の農協法改正案を、英国・改正協同組合法を物差しに評価してみたい。
前者で注目すべきは、「員外取引の無制限の許容」という点。協同組合の否定につながるものだ。農協法改正案で議論されたのは、准組合員問題だった。正組合員と准組合員の比率が逆転している状態が、協同組合の本旨に触れるとして、准組合員の事業利用に規制をかけようとしたのだ。
英国・改正協同組合法は、19世紀型の協同組合の殻を破った点で画期的といえよう。それは、メイヨー事務局長が指摘した「多様な経済を創り出すこと」が目的だった。これこそ農協法改正案が目指すべき到達点だった。そして今回の農協改革が、TPP交渉妥結をにらんで政府が取り組んだということならば、なおさらのことである。
ただひとつだけ疑問が残る。明田論文には触れていなかった協同組合への税制上の優遇措置との兼ね合いだ。
そもそも協同組合には、法人税や固定資産税などの優遇措置を与えている。経済的な弱者を構成員にしていて、なおかつ営利を目的にしていないという事情があるからだ。したがって、員外取引や准組合員の事業利用に規制をかけることを条件に、税制上の優遇措置を与えたと解釈すべきである。英国のように「員外取引の無制限の許容」という条項を盛り込めば、優遇措置は継続されないというのが論理的帰結だ。
次いで日英の最大の違いは、株式会社などへの転換で、農協法改正案が「選択により」という条件にしたのに対し、英国・改正協同組合法は選択制とはせず、制度のプラットフォーム(共通基盤)とした点だ。これにより、英国・改正協同組合法はコーポレート・ガバナンスを強化する内容を盛り込むことになる。マネジメント(運営)、内部統制、監査(内部監査と外部監査の二本立て)を強化したのだ。
一方、農協法改正案は、コーポレート・ガバナンスという点でも、英国・改正協同組合法に大きく遅れた。その象徴的なものが、政府が提示した公認会計士による外部監査の義務づけにJA全中が渋ったことである。最終的には義務づけられたものの、コーポレート・ガバナンスという点では比較の対象にはならない。
最後に筆者が着目したのは、英国・改正協同組合法が「イコール・フッティング」の考え方を取り入れた点。残念ながら、英国・改正協同組合法の原文を目にしたことがないので、それが法律の中にどのように取り込まれたかは確認の方法はない。
ただ協同組合サイドのメイヨー事務局長が、先に紹介した談話で「イコール・フッティング」という表現を使っていることを考えると、かなりきちんとした規定が取り入れられたと考えられる。

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