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特集

裏読み農協改革


残念ながら農協法改正案には、英国流のイコール・フッティングの考え方は取り込まれなかった。全農や農協を手厚く保護することがごく当たり前のように続けられているので、そうした発想さえ出てこないのだろう。イコール・フッティングの考え方は、別段、株式会社への転換とは関係なく、取り入れておくべきものだと考える。
農協法改正案の考え方には、農協は農家に対し、また全農は農協に対し、「事業利用を強制してはならない」という表現がある。解釈によっては、農協や全農は割高な商品やサービスを押しつけ販売する「悪徳商人」であると政府が半ば認めたようなものではないか。そんな組織には、間違っても弱者救済を標榜するロッジデールやライファイゼンの名を口にしてもらいたくないと思う。

【成長とは何の関係もない改革案】

株式会社化への転換では、全農が対象となる。世間と世界を相手に4兆円もの事業を営む全農が、いつまでも協同組合の組織形態でいることは、全農にとっても不幸だし、全農のために税金を負担させられたり、補助金が使われたりして、とにかく納税者は大迷惑だ。
全農は、この問題について公式見解を出していない。反応のようなものとしたら、中野?實会長が、1月23日付け産経新聞に発言した、「(株式会社化は)農協や生産者の混乱を生む」という点だけだ。

【ダブル・トークで改革に抵抗】

政府与党が合意した農協改革の概要がまとまって3日後の2月12日、JA全中の萬歳章会長は、東京・有楽町の日本外国特派員協会で記者会見に応じた。農協改革案の感想を求められた萬歳会長は、「おおむね、われわれの考えと一緒」と簡単に述べるにとどまった。株式会社化への転換のことは質問も出なければ、萬歳会長が触れることもなかった。
その記者会見の画像をボンヤリと見ていて奇異な印象を受けたのは、その両脇にICA(国際協同組合同盟)のポーリン・グリーン会長、ジャン=ルイ・バンセル理事がいたことだ。最初、ICA会長が何のために同席しているのか、よくわからなかったが、すぐに疑問は解けた。その答弁を聞いていると、やたらICAがJA全中の肩を持つような発言を繰り返していたことだ。日本政府による性急な農協改革に反対しているというメッセージだった。
こんな茶番劇はないと思った。英国人のグリーン会長は、ICA会長に就任する前には英国協同組合中央会の事務局長だった。その後任が、「イコール・フッティング」発言のマイヨー事務局長。ICAの中核メンバーのひとつ、英国協同組合中央会が株式会社への転換メリットを強調していたのに、記者会見では口にチャックしていた。農業協同組合新聞とのインタビューではリップ・サービスにも努めていた。

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