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江刺の稲

後継者たちよ、久松達央さんの言葉を聞け

  • 『農業経営者』編集長 農業技術通信社 代表取締役社長 昆吉則
  • 第228回 2015年04月28日

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すでに本誌読者の多くもお読みになっているのかもしれないが、久松達央さんの『小さくて強い農業をつくる』(晶文社刊)を紹介したい。あまりにその内容がすばらしく、本誌編集長として少し嫉妬を感じるほどの好著である。
久松さんはこの本を、これから農業を目指そうという人に向けて書いているが、農業後継者は言うに及ばず、農業経営者たちこそ読むべき実践的な経営管理の解説書である。同時にそれは、農業に自らの生きる道を選んだ久松さんが農業、そして自らに問いかけてきた精神史でもある。農村、そして農家に産み落とされたままに育ち、現代の日本の社会で農家であることの意味を問うことをしていない多くの農業経営者たちにこそ読んでいただきたい。
農業界では「農家に後継者がいないのは農業が儲からないからである」ともっともらしく語られるが、僕は「農家の子供たちが農業を継がないのは農家、そして農業界に誇りがないからに過ぎない。そもそも、他に働くべきたくさんの仕事があるのに、なぜ農家の子供が農業を継ぐ必要があるのか」と悪態をついてきた。それに対して、文句を言う人に限って、農業をいかに崇高な仕事であるかとうそぶきながらみじめに背を丸めている場合が多い。そんな親の姿を、そして農業に保護をと叫ぶその姿を、子供たちはどう見てきたのだろうか。仕事を続けていくためには一定の才覚が必要であるのは農業も他の仕事も同じで、農業のどんな部門でも大儲けとは言わなくても、ちゃんと食える人はいつの時代にも確実にいる。

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