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岡本信一の科学する農業

「農業を科学する研究会」が発足した理由

土壌改良の効率的な方法を
知りたいのは農業者である

前回の最後に書いた「ではどのようにしたらそのような理想的な土壌の硬さになるのでしょうか」という話の続きである。
最初に書いてしまうと、私はこの質問の答えを持ち合わせていない。前回までの連載をお読みいただければ分かる通り、どのような土になったら良いのかということまではたどり着いているのだが、どうしたらそのような土壌になるのかはまだわかっていないのである。
コンサルタントの仕事の一部に、依頼者(クライアント)の目的にそってデータを取って解析したり、あるいはそれに応じた解決策を提示したりすることがある。もし、私が最も効率のよい土壌改善の方法を知っていれば、それを提示することもできたわけだが、残念ながら、その方法を知らないのだ。
しかし、私の思いとしては、ここまで科学的であり、数値の裏付けがあると言ってきた以上、数値データに寄らない提案に終始しているというのは残念な事態である。
では、なぜそれを調べていないのか。答えは簡単で、要するに調べるのが大変すぎるためである。国の支援でも受けながら仕事ができるのであれば容易かもしれないが、土壌改善の実態を数値で測定して解明するには、膨大なデータが必要となる。
測定機器の購入、事前の打ち合わせと試験計画の策定(実際にはここがもっとも重要であり、時間と手間ひまをかけるべきなのだが、多くの方はそう考えない)、実際の調査、解析、結果の公開、データの維持管理など膨大な仕事が必要で最低でも年間数百万円はかかる。
さまざまな土壌があり、さまざまな土壌改良の方法がある。これらの無限とも言える組み合わせから、見当をつけて、裏付けデータを取ること自体が相当骨の折れる仕事になる。ゆえに、これまで断念せざるを得なかったのだ。
できることと言えば、折にふれて、こういった実情を関係者の方々に語ることだった。企業にしても、土壌改善のノウハウに裏づけとなる数値データがあれば、技術的アドバンスをもって技術開発に取り組むことができ、そこから利益をもたらす可能性があるからである。
残念ながら、そのような協力者はこれまで現れていない。農業技術に精通し、しかも長期的な展望がなければ、土壌改善のノウハウを数値的に明らかにするという意味をなかなか理解できないのかもしれない。
ところが、読者の皆さん、とりわけ現場で作物を生産している農業者の皆さんには、この意味がおわかりいただけるのではないかと思う。そう、農業者の方にとって最も知りたいのが、「どうしたら簡単に土壌改善ができるのか」なのである。

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