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小麦の銅欠乏の症状と対策

小麦の銅欠乏の症状と対策 後編


以上から銅欠乏は小麦のように明瞭な症状が現れなくても潜在的な欠乏地帯がかなり存在すると思われる。0.1 N HCl-Cuが0.5mg/kg以下とすると、筆者の試算では黒ボク土の50%、その他褐色森林土、台地土、泥炭土の一部を合わせ、全国では約60万haとなり、これは耕地面積の12%となる。表3には世界の銅欠乏土壌面積を示した。日本の銅欠乏面積割合は米国と同じく全体の12%である。日本は火山国であり、黒ボク土が多いため、銅欠乏土壌の割合は高くなる。

6 作物の微量重金属含有率と麦類以外の作物の銅欠乏

日本国内での銅欠乏は麦類しか報告がないが、それ以外の作物ではどのようになるか、Dr. Allowey 教授から提供があった冊子から紹介しよう。これから作物生産や品質は銅欠乏に大きく影響されることがわかる。果物やニンジンなどもサイズの小型化、形と色の悪化、それに同じように重要なのが保存性の低下や栄養価の低下である。これらは生産物の市場経済にも影響することから当然配慮すべきである。写真1に示したように、銅欠乏によるこれらの影響のいくつかの例を示すと、柑橘類ではその小さくて不恰好な外観;タマネギの変色とスポンジ性、ニンジンの変色、レタスのクロロシスと萎れ、小麦と大麦のタンパク質の減少、アミノ酸の転換率の悪さ、てん菜のジュース中の高いアミノ酸、エンドウの斑点の影響が指摘されている。一方、高モリブデン土壌ではとくに反すう獣に銅欠乏が現れ、硫酸銅の供与で治癒することが古くから知られ、日本では島根県でのモリブデン過剰地域でこの対策が中国農試の研究で報告されている。

7 銅欠乏を
どうするか

(1)銅の土壌中存在量と吸収量
まず、小麦が一作に吸収する量を見てみよう。表4にはオランダのワーゲニンゲン農業大学土壌科学・植物栄養学教室で、サンプルの名を伏せて同じサンプルを世界中の研究者に送って分析して得たデータの平均値である。一点当たり40人以上、なかには1000人を超える研究者で求めた数値で信頼性が極めて高い。これから小麦を見ると、子実は5mg/kg、 茎葉は 2~3mg/kgである。これは著者が分析した値とほとんど同じで、銅欠乏地帯では地上部全体でも0.8~2.0mg/kgの低い値になる。そこで、5mg/kgの濃度として10a当たりの乾物収量を1tとすると、Cuの吸収は10a当たり5gとなる。

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