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土門「辛」聞

株式会社化こそ全農が唯一生き残れる道だ JA全中・萬歳会長の辞任が残した置き土産

農協改革法案の国会提出直後にJA全中の萬歳章会長が突然辞任した。農協法の改正法案が閣議決定した4月3日から数えて、6日目のことだった。
一つの区切りで突然辞任

土門 昔、「ベンチがアホやから野球ができへん」と監督を批判した野球選手がいたね。萬歳会長の心境は、これと一緒だな。
質問 阪神タイガースのエモやんこと江本孟紀投手のことだね。
土門 エモやんは、その発言をした直後、「チームやファンに迷惑をかけた」と、そのシーズン限りで引退した。萬歳会長のケースもよく似た事情があったのだろう。
質問 農協改革に「一つの区切りをつけた」と退任の弁を語っていた。
土門 辞任会見の前々日、萬歳会長は首相官邸を訪れ、安倍晋三首相に、「自己改革を精いっぱい、組合員のために進めたい」と決意のほどを語っていた。その席には、農林中央金庫やJA全農など農協全国組織のトップも雁首を揃えていたし、環太平洋連携協定(TPP)交渉で、農産物重要5品目を守るよう要請していたことなどから、その直後に辞任表明するとは誰も思わなかった。
質問 その2日間に何かが起きたのかな。
土門 実は、萬歳会長らが安倍首相と農協改革でエールを交換した翌日の4月8日、JA全農の成清一臣理事長が、「近々に株式会社化を検討することはしない」と記者会見で発言。これで萬歳会長の心がポキッと折れたみたいだ。
質問 その「株式会社化」とは何のことだ?
土門 読んで字のごとく、全農や農協などの協同組合組織を株式会社に転換することだ。新聞などメディアは詳しく伝えていないので、「何、それ」だけど、農協改革法案の隠れたポイントだった。農協改革で最初に話題を集めたのは、全中の農協への指導権と監査権の廃止だった。最後の方になってからは、准組合員への事業利用の制限問題が注目された。株式会社化は早くからテーマとなっていたし、これが農協改革の肝中の肝のテーマと考えていたが、全中が腫れ物に触るようにというか、メディアに気付かれないような広報戦略を取っていたから、誰も気がつかなかったということだろう。
質問 でも、最後にフタをしたものが爆発してしまったということか?
土門 結果として全中会長と専務を退任に追い込む原因となったわけだから、ピッタリの表現だな。萬歳会長にしてみれば、政府や与党などとは全国連と相談しながら交渉を進めてきたのに、何を今さら、ちゃぶ台をひっくり返すようなことを言い出すのかと怒りたいぐらいの心境だったに違いない。エモやんなら、「ベンチがアホやから」とケツをまくることができるが、全農は全中の活動資金を賦課金として提供してくれる大口スポンサー。口が裂けてもそうは言えなかったわけだ。
質問 なぁーんだ、内輪揉めか。
土門 首相官邸を訪れた際に、全農の中野吉實会長もいた。その会長が、政府に対して農協改革に協力すると約束しておきながら、その翌日に理事長が約束を反故にするような言動をするのは、組織のトップとしては失格と批判されても返す言葉はないだろう。
質問 初歩的な質問だが、全農の会長と理事長って、どっちが上なの?
土門 会長はお飾りで実権を握っているのは、理事長。企業なら社長格か。会長は、財界活動ならぬ政界活動に忙しく、選挙情勢は読めても、財務諸表はからっきし読めないという偏った特技がある。JA佐賀中央会の会長でもある中野会長は、1月の知事選でも特技を発揮していたよ。菅義偉官房長官が中心となって擁立した官邸推挙の候補に、対抗馬を立てて大勝したことだ。おかげで菅官房長官の面目は丸つぶれ。

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