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特集

家業を引き継ぐということ

多様な顧客満足に応える商売へ

新規就農を志す都会の若者が増えてきたとはいえ、既存の生産基盤を抱える農業者には家業を継いだ経営者が多い。政策も全農も変わろうとする今、これまで通りの慣習がいよいよまかり通らなくなっている。「今に時代は変わる」と言い続けてきたその変化が、いままさに目の前に来たのだ。 ふと周囲を見回してみれば、農業や食に関わる業種にも、家業として屋号を守り続けている経営がある。その中には、制度や伝統に守られた業態の事業も数多くある。 たとえば、かつては町の至るところにあった米屋に酒屋。消費量の減少に輪をかけるように、規制緩和の波が襲った。1軒、また1軒と姿を消し、消費者はコメも酒類も、スーパーマーケットや大手販売店での購入、さらにはインターネットで注文して宅配するサービスを利用するように変化してきた。
なかには店を閉める選択をした事業者も多くいたはずである。それでも、生き残った店舗には、商品を求める顧客だけでなく、売り込みにくるコメ農家や酒造メーカーなど需要者も集まっている。それは、権利や制度に守られた商売ではなく、顧客の求める嗜好をとらえ、会話を通じてコミュニティのようなものを提供しているからではないだろうか。
伝統を守るということは一説によれば、技術や関わりを伝承するだけでなく、変革し続けることだという。時代の変化はマーケットを変え、品物を変え、インフラを変え、商習慣をも変えてきた。それに合わせて、商売のやり方も変えていかなければならないのは当然だが、変化のスピードが速くなればなるほど、思考を巡らすゆとりを持てなくなる。
こうした逆境をピンチと考えるのか。それとも、チャンスととらえるのか。大企業に負けるという発想から悲観的になる経営者がいる一方、小さい事業こそやり方次第で面白がれると考えて、新たな商売のやり方を模索する経営者もいる。
昨今、さまざまな発想や生き様を「多様性」という言葉で表現するようになった。農産物も単に食糧として購入する時代から、お客様が多用な価値を求めて、選ぶように変化した。顧客満足という点ではお客様のニーズを捉え、コミュニケーションを図りながら、商品を提供できる小さな事業者には強みがある。
今回は模索しながらも挑戦を続ける米屋、種苗小売店、漬物店、酒屋の4軒の経営者に話を聞いた。

インタビュー
継いだからには面白がって、
お客様と新たな価値を創造せよ
(三代目小池精米店 小池理雄さん)

昆吉則(本誌編集長) 小池さんは東京の原宿で小池精米店というお米屋さんを経営されています。米屋という商売は時代が変わっていくなかで形を変えてきたと思いますが、現在のこの場所でのお取り組みについてお聞かせください。
小池理雄(小池精米店3代目店主)原宿の中でも弊社のある神宮前6丁目付近には、八百屋や肉屋、酒屋など生活用品が揃うお店が残っていまして、今でも商売をやっています。そこに店舗を構えているのですが、うちは私で3代目になります。
昆 今は人が集まる賑やかな場所ですが、昔は住宅地でしたよね?

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