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ところが普通、起業する人ってビジネスモデルを持っているんですけど、僕は流通と生産をつなげたいと思っているくらいで、それ以上何もなかった。周りからはヘンな目で見られるし、仕事もない。そうなるとどうなるのか。2人目の子どもが産まれるんですよね(笑)。慌てて家族会議を開いて、「1年やって会社からお金をもらえなかったらつぶす。その間は月10万円で家計をやりくりしてくれないか」と妻に頼んだら了承してくれたんです。
昆 奥さんのおかげでいまがある(笑)。最初は何から始めたんですか?
及川 一番得意な営業をやろうと思って、地元のミカン農家を農協ではなく、スーパーにつなげて、1件成立したら5万円という商売を考えました。でもつなげても、契約書も交わしていても、お金をくれないんです。田舎に行くほど、見えない労力に対して対価を払うことや、コンサルの価値がわからない。でも、僕は中を抜いているわけじゃないから、生活に困る。仕方なく、ミカンをくださいと言うと、ミカンはタダでくれるんです。そのミカンを駅前で売ってしのぎました。
でもそのうち、「及川に野菜や果物を渡すと売ってきてくれる」という噂が立って、「直売所は雨や平日に売れないので、都会に持っていけないか」というお話をいただいたんです。都会で店を持つには大金が必要だし、八百屋の経験から、肉と魚がないと野菜は売れないことはわかっていました。そこで、スーパーに場所を借りられないか交渉して、和歌山のスーパー2店舗と農家20人で事業を始めたんです。
「全国にある道の駅を都会に
持っていく事業」を展開
昆 いまの事業がどういうものか、説明してください。
及川 一言でいえば、「全国にある道の駅を都会に持っていく事業」です。作ったものを自由に販売できるプラットホームを、農家さんとスーパーに提供しています。仕組みは簡単で、農家さんが当社の全国50カ所の拠点に野菜を持ってきて、値段と販売先のスーパーを自分で決めて、バーコードシールを張って出荷します。それを我々が契約している運送会社に運んでいただき、翌日の午前中までにはスーパーに届けます。
最初はこれを全部1人でやっていたんですよ。集荷場を作って、農家さんを集めて、野菜をトラックに積めて、運んで、営業して、売って、伝票を切って、入金回収までしていました。
昆 「もう一度やれ」と言われたら?
及川 やりません!(笑)。しんどすぎます。振り返るとタイミングも良くて、いまでも20年前でも、うまくいっていなかったと思います。
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及川智正 オイカワトモマサ
(株)農業綜合研究所
代表取締役
1975年東京都生まれ。98年東京農業大学農学部(現・国際食料情報学部)卒業後、半導体用産業ガス専門商社に入社。2002年結婚を機に妻の実家がある和歌山県に居を移し、新規就農。施設園芸を行なうとともに独自の販路を開拓する。05年エフ・アグリシステムズ株式会社関西支社設立。07年10月株式会社農業総合研究所を設立。先の第1回A-1グランプリに出場し、奨励賞を受賞した。
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