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座談会

現場で語る農業ICTとスマート化 経営者にとって必要な技術とは何か?


奥山 今年は、システムを開発するために、麦の作付けを10haから3haに減らしているけれど、来年からは、完成したシステムが使えるし、元通りの作付けにも戻せるので、楽しみですよ。
結城 何かを得るためには、何かを犠牲にしないと駄目なんですよね。
――とはいっても、「誰でも簡単に使えるものをください」という要求が出てきますよね。
奥山 本当の横着者は、何もしたくないのかな。そういう人はそもそも農業者には向かないでしょう。ただ、簡単に使えるものがほしいというニーズに応えるのも商売ではありますね。
濱田 ITもICTも使う人の人となりを伸ばすことしかできない。底上げはできないんです。どのソフト、どのツールを使ったからといって、篤農家になれるわけじゃない。本人が頭に思い描いていたことが実現されるだけですから。もちろんリテラシーがない人にも使える商品、つまり、事前のデータ入力や設定が必要なくて操作も簡単っていうもの。そのニーズが大きいのは、当然のことです。でも一方で、農業経営に本当に有用な機能を提供するためには、事前にそれなりのデータを入力しなくてはならなかったり、ある程度の操作が必要だったり、というのもまた事実だろうと思いますね。
奥山 入力が簡単にできるということは、詳細な情報は扱えないということでもあります。それは初心者にとってはいいんですけれど、その人が使い慣れてきて、ステップアップしたいときには問題になる。そのときに次の商品を提案できればいいと思うんですね。私のようにずっと使い続けて、新しい要望を出す側に立つと、簡単な画面で扱うシステムでは物足りなくなるわけですよ。
結城 その辺りを人に説明するのは難しいですよね。人によって「簡単」の度合いが違うから。
濱田 システムを作るときにずっと考えることは、どちらの人を相手にするか。今、私の会社で提供しているスマホ・タブレット用のGPSガイダンスは、「簡単」なほうにしました。装着したらすぐ使えるように、精密農業も圃場管理も応用的な機能は全部抜いて。だけど、奥山さんは、システムの開発に協力しながら、一緒に育っちゃったんだと思いますよ(笑)。
奥山 確かに(笑)。もう初心者のレベルには戻れないですね。そのレベルに戻る理由もないですけどね。
濱田 難しいのは、新しく導入する人が、どのレベルから入ってくるかでしょう。作っている側も一緒に育っちゃうから。バージョンアップするにつれて、新しく導入する人から面倒くさい・敷居が高いと言われてしまうようになるのは、そこでしょうね。

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