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さらに、土壌改良が必要かどうかは、圃場条件ではなく作物からも考える必要がある。たとえば、肥沃な土壌を嫌う作物では土壌改良の必要はないだろう。ソバをはじめとする雑穀の多くがそれに当たる。ところが、農業界一般ではソバ栽培でも土壌改良が必要とされていて、多収を狙って多量の施肥が行なわれている。だが、ソバの場合、過度の施肥をすればするほど収量・品質ともに落ちる可能性が大である。
土づくり万能主義が経営を破壊する
このように、圃場条件や作物によって、土壌改良の費用対効果がそもそも見込めないケースがある。そこでどうすべきかと言えば、何もしないという選択肢を採ることだ。費用対効果が期待できないことはすべきではない。
無限にお金を投入できるのであれば、土壌は良くなるかもしれない。しかし、現実の農業経営において、それはありえない話だ。ところが、どうも農業界には、土づくりにヒト・モノ・カネを投入することは常に良いことだと考える「土づくり万能主義」が蔓延しており、経営に甚大な悪影響を与えている。
その思い込みから脱するには、費用対効果を考える姿勢を貫くことだ。費用に対して効果が薄いものはやめるという選択肢をきちんと考える。土壌改良をしても費用に見合う効果が期待できないのであれば、現在の低収量を受け容れるべきではないのかというのが私の考えだ。
その逆は、圃場や作物の条件から効果が出にくいことがわかっていながら、他の圃場が実現しているのと同等の最高収量を目指し、ヒト・モノ・カネを闇雲に投入し続けることだ。
そういうあがきをやめれば、まず同レベルの収量の中で利益率が改善する。そして、その判断には期せずして収量が増えたり、品質が良くなったりといったお土産がついたりすることも多いものだ。その原因はさまざまだが、有機質の過剰投入による養分過多がなくなったためということがあるだろう。
さて、費用対効果は圃場の条件によって変わると説明したが、それはつまり、時の移り変わりの影響も受けるということも押さえておいてほしい。かつて出た効果が今では出ないということも、その逆もある。
水田の土壌改良の効果はこれから期待できる
たとえば水田だ。水田というのは、水を張ることで土壌の損耗を防ぎ、しかもミネラルを含む水が常に流入してくる。畑地と違ってある程度の均一性が保たれており、一般に水はけの問題も存在しない。また、播種機・移植機が優秀であるために、株間も非常に正確で、全体的に言って、畑地に比べて土壌を傷めない栽培方法だ。だから、土壌改良はあまり必要ではないと考えられてきた。
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岡本信一 オカモトシンイチ
(有)アグゼス
代表取締役社長
1961年生まれ。日本大学文理学部心理学科卒業後、埼玉県、 北海道の農家にて農業研修。派米農業研修生として2年間アメ リカにて農業研修。種苗メーカー勤務後、1995年 農業コンサ ルタントとして独立。 1998年(有)アグセス設立代表取締役。農業 法人、農業関連メーカー、農産物流通企業、商社などの農業生 産のコンサルタントを国内外で行っている。講習会、研修会、現地 生産指導などは多数。無駄を省いたコスト削減を行ないつつ、効率の良い農業生産を目指している。 Blog:「あなたも農業コンサルタントになれる」 http://ameblo.jp/nougyoukonnsaru/
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