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北海道長沼発ヒール・ミヤイの憎まれ口通信

なぜGM大豆栽培に踏み切ったのか(前編)


ウワサどおりといえば失礼なのだろうが、大豆は色も変わらず、すくすくと育ち、周りの雑草は色が変わり始めているのが確認できた。次は実際の畑に播種する段階になる。その時点で5月25日くらいだったと思う。1週間程度遅い播種時期だったが、半日で無事に播種作業が終わり、生育状況の確認作業に入った。
播種して1カ月で大豆は三葉期になり、アカザやタデも発生してきたので、ラウンドアップを指定されたとおり2リットル/ha散布して様子を見た。2週間経過しても、大豆の生育には全く影響がない。
やはり雑草はすべてなくなったが、種子のパンフレットには2回使用可能とある。そこで開花期の薬害を避けるために播種7週目にあえて2回目のラウンドアップ散布を同量で行なった。結果は見事で、大豆の生育には全く影響がなかった。
秋の収穫の時期になり、収量が気になった。残念ながら、収量は日本の平均と同じ1.8t/haで、2年目も同じ結果であった。米国の生産者の話を聞いたが、やはり既存品種よりも収量が悪いようだ。
私の農場で試したGM大豆はミネソタ州南部の気候と緯度に合う品種で、私の農場とほぼ同じ条件である。やはり何かが、おかしいということになるのか。
これにはしっかりした育種としての理由があった。残念なことに98年当時は、このミネソタで十分活躍できるGM大豆の育種が間に合わず、収量が米国でも既存の品種よりも良くなかったのだ。
モンサント本社は北緯38度37分でミズーリ州セントルイスにあり、アジアだと現在の北朝鮮と韓国の軍事境界線、日本では山形市の少し北の尾花沢市になる。専門的な頭の体操になるのだが、山形名産のだだちゃ豆の育種をした試験場が北海道の北緯43度に適合する大豆を2年で開発・販売できるか、という質問と同じである。
もちろん、答えは限りなくノーである。大豆は日射量、温度、場所等が違えば収量に直接影響を及ぼす。緯度で1度違うと収量が半減するといっても過言ではないだろう。
98年当時、GM大豆の育種が進んだセントルイス近郊用のものは、既存の大豆より少し良い程度だった。現在ではセントルイスから700北のミネソタにおいても3t/ha以上は当たり前なのだから、特定地域のGM大豆はこの15年で収量が50%上がったといえるのだろう。しかし日本では、過去50年間、1.8t/haのままである。
GM作物の登場により、モンサントなどの化学メーカーが全米の種子メーカーを買収し、より早く全米各地の気象条件に合う品種開発して栽培、収穫できるようになった。このことは、輸出を通して日本の消費者にもしっかりと恩恵を与えることになる。

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