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新・農業経営者ルポ

ワーキング・ホリデーを利用したおもしろがる多角化農業経営

家族経営では人手が足りないとなったとき、パートや外国人技能実習生を雇うことは珍しくない。ただ、そこにワーキング・ホリデーが加わったらどうだろうか。北海道鹿追町の村瀬裕志(59)は、彼ら彼女たちを必要なときに雇い入れるノウハウを習得した。一方で、人員の拡大路線が彼に試練も与えるのだが、本人はびくともせずに次々と手を打ち続けている。  文・写真/永井佳史
村瀬と初めて会ったのは2010年秋のことになる。農場のホームページ内にある彼のブログを見て、いろんな国の従業員が働いていることに興味を持った。そこに写っていたのは、中国人女性のほか、日本人の農業を志していそうな青年男性と白人男性だった。
「2005年から青汁の原料になるケールの生産を本格的に始めて、人手が大量に必要になったんだよ。無農薬栽培で収穫が手作業ということもあって、とにかくたくさん働き手が欲しかった。最初は帯広の人材派遣会社に頼んで、多いときには1日最高30人なんてこともあったんだけど、いまなんか3人でも集めてもらえないことがざらだからね。取り合いだよ」
人手の必要性に迫られ、外国人技能実習生(以下、実習生)、そしてワーキング・ホリデー(以下、ワーホリ)の活用と続いていくわけだが、ケールの生産に着手するまでの村瀬は十勝のごく一般的な畑作農家だったようだ。

NZの放牧酪農を見て、畑作への転換を志す

「就農したころはね、酪農専業で、牛が50頭くらいいたかな。それで海外の先進地で勉強しようとなったとき、1年は辛いという理由で、北海道が冬の間の半年間、季節が反対のニュージーランドに行くことにしたんだよね」
ホストファミリーとは最低限のコミュニケーションを図ったというものの、いまの村瀬に通じる社交性はまだ醸成されておらず、渡航前には絶対に大丈夫だと思っていたホームシックにもかかったそうだ。一方、酪農実習ではその後の農業経営を左右する、グローバルスタンダードを目の当たりにした。
「ニュージーランドは勉強にならないとも言われたけど、放牧酪農のメッカだからね、びっくりしたよ。広大な牧草地で、ほとんど経費のかからないスタイルなんだから。当時はデントコーンもまったくなかったね。乳量はあまり出ないんだけど、経費はほんとにかからない。日本じゃかなわないと思ったよ。一番衝撃的だったのは、酪農家がホリデーに入るために、閑乳といって2カ月間、全頭で搾乳しなくなることかな。受胎させれば乳を出さないから前もって受精させるんだけど、受胎できない場合は屠殺しちゃうんだよね」

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