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帰国した村瀬は農場主の父親と相談し、畑作を徐々に手がけるようになる。圃場には長年、堆肥を投入してきたこともあり、ジャガイモや小豆がおもしろいように取れたという。そして、ニュージーランドでの酪農実習から7年後の1982年、畑作専業に転換する。それから20数年余り、北海道畑作の基幹4品目で規模拡大を続けることになる。
ワーホリ活用で期せずして広がった世界観
縁あって2005年にケールを経営品目に取り入れると、最初は人材派遣会社で作業員を手配した。だが、十勝管内の畑作農家との競争が激化し、満足に人集めができなくなる。これを理由に、一度は生産から撤退した。そこで目をつけたのが外国人技能実習制度であり、ワーホリだった。前者は2008年から、後者は2012年からそれぞれ活用している。
ここでワーホリについて簡単に説明しておく。この制度は、二つの国・地域間の取り決めなどに基づいたもの。自国の文化や一般的な生活様式を理解してもらう機会を相手国の青少年に提供するため、一定期間の滞在費を補うための就労を相互に認めている。発給されるビザは観光や就学、就労が可能な特別なもので、自由度が高い。日本は現在、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、韓国、フランス、ドイツ、英国、アイルランド、デンマーク、台湾、香港、ノルウェーとの間で協定を結んでいる。外国人技能実習制度との大きな違いは、受け入れ期間の短さと、渡航費や保険などの負担がないことだ。
「実習生の場合は通年で与える仕事がないとダメなんだよね。期間もおおむね3年なので、受け入れには覚悟が必要になる。その点、ワーホリは気楽でいいよね。月給制じゃないから、雨が降って仕事がなかったり、本人が体調不良で仕事できないときは給料を払わなくていいし。日本にいられる期間は最高で1年間だけど、こちらの人手が欲しいときと本人の希望がマッチすれば2週間とかの短期でも雇用できる。本人が嫌だと感じたら予定の途中で帰ったり、別のところに移ることもありだけど、いままでそういうケースはなかったね。だいたい期間延長を求められて、後で控えていた人とダブっちゃって、こちらが困るパターンが多いね」
実習生は村瀬の所属農協もかかわる受け入れ組合経由で中国人の既婚女性を2人ずつ採用してきた。ただ、それも2013年いっぱいで打ち切り、取材した今年6月18日には日本人の通年雇用の男性2人と女性1人、さらにワーホリで台湾からやってきた女性2人が一緒にキャベツの播種作業に取り組んでいた。
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村瀬裕志 ムラセヒロシ
村瀬ファーム
代表
1956年、北海道鹿追町生まれ。酪農学園大学短期大学部を卒業後、ニュージーランドで酪農実習を行なう。その後、実家で就農すると、82年に畑作専業へ転換する。中国人技能実習生に加え、2012年からワーキング・ホリデーを利用し、アジアやドイツ、オーストラリアなどから年間10人以上の従業員を受け入れてきた。 http://www.murasefarm.com/
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