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村瀬が雇用してきた歴代のワーホリ経験者は台湾人と香港人に集中している。その背景にはこんなできごとがあった。
「ワーホリとして最初に受け入れたのは父親が弁護士という台湾の男性だったんだ。彼は国内で有名なブロガーだったみたいで、インスタグラム(iPhoneまたはAndroid端末で写真を撮影し、共有するスマートフォンアプリ。写真に特化したSNS)とかに農場での様子を公開していたんだよね。休みの日もどこどこに行って楽しかったとかって。そうしたら一気に評判が広まって、台湾人からの申し込みが殺到しちゃってさ。そのうち、それが香港にも飛び火して、現地の旅行雑誌に取材されたりしてね。それからというもの、台湾人も香港人も毎年数人ずつ来るようになった。ドイツ人やオーストラリア人を含めると、累計で70~80人くらいにはなるかな」
どうしてこんなに多くの外国人が村瀬のもとを訪ねてきたのか。もちろん、台湾人ブロガーが果たした役割は決して小さくないはずだ。しかし、それだけでないことは村瀬を見ていればなんとなくわかる。過去の実習生やワーホリを含め、村瀬は親しみを込めて「おとうさん」と呼ばれている。自身の子どもと同世代くらいの外国人と我が子のように向き合い、ワーホリの目的の一つである観光に連れていくこともあれば、ときには厳しく叱りもする。こんなエピソードも聞いた。
「実習生がいたときのことなんだけど、2人にしていたというのはホームシックにかからないようにするためだったんだよね。1人じゃ中国語で話せる相手もいないからね。でも、これには逆効果もあるわけで、ケンカもするよね。朝礼でその日の仕事を伝えるときに彼女たちの顔を見ればだいたいわかるんだけど、目がはれぼったかったりするわけ。ほかの従業員から教えてもらえることもあるけど、そんなときは『ケンカはダメだぞ。仲直りしなさい』って指導することにしている。中国の送り出し機関の教育がしっかりしていることもあって、謝らないとかそういうことはなかったね」
ワーホリでは雇用主が食事を用意する義務は本来ない。だが、村瀬は白米と野菜は無料で提供している。月に何回かは外食やカラオケに誘うこともあるそうだ。そうした配慮が口コミや村瀬のブログなどから未来の来訪者に伝わるのだろう。
余談だが、村瀬が見てきたワーホリの外国人事情も披露する。
「ここに来る主だった目的は農業とアウトドアの体験みたいだね。アウトドアするにもお金がかかるから、それで農作業で得た報酬をそっちに回すという感じかな。台湾に限っては、現地通貨と日本円とでは日本円の価値が高いので、貯金して持ち帰るケースもある。全般的には節約家が多いね。自分ではお金を使わないで、『おとうさんが連れていってくれるなら喜んで』みたいな。あとはいろんな国の人と交流してみたいってことかな。ここで出会って結婚した日本人アルバイトのカップルが2組、ゴールを迎えそうな国際結婚のカップルが2組いるね。日本人の大学生のアルバイトなんかは異文化交流を求めてというように、去年は京都大学と大阪大学、今年は慶應大学と帯広畜産大学の学生がやってくる予定だね」
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村瀬裕志 ムラセヒロシ
村瀬ファーム
代表
1956年、北海道鹿追町生まれ。酪農学園大学短期大学部を卒業後、ニュージーランドで酪農実習を行なう。その後、実家で就農すると、82年に畑作専業へ転換する。中国人技能実習生に加え、2012年からワーキング・ホリデーを利用し、アジアやドイツ、オーストラリアなどから年間10人以上の従業員を受け入れてきた。 http://www.murasefarm.com/
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