ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

編集長インタビュー

「農村経営者」の産業創造力 地域独自の価値をいかに見出し活用するか


伊藤 私は農業を自分で値段をつけられる産業にしたいと考えました。モノをつくっているのに価格形成に携われないのはおかしいと思ったのです。以前は生産の規模拡大を目指していましたが、そのまま続けていたら産業界のなかで生かされない位置に居続けることになる。そう思って、豚肉の加工と販売を含めた経営にシフトしました。それが「農業を食業に変える」という意味です。
昆 確かに農業界は大きなマーケットだけを追求してきたので、農業者は限られたマーケットのなかでの競争を押し付けられたり、助成金がつくものを指導されたりして不幸になってきた経緯があると思います。しかし、産業界ではみんな自分で顧客を見つける「商売」をしていますよね。
伊藤 若いころは「商売」に抵抗がありましたが、大阪の人から商売人は商人とは違うと聞いたのです。地域の不便を解消して地域のお客様に感謝されるのが商売人だと。それで「商売」を始めました。しかし、創業当時はノウハウもなかったので、顧客ニーズには関係なく自分がつくった商品がすべて正しい、何もわかっていない顧客を教育しなければならないと思っていました。バブル経済のときでしたから値付けも好き勝手にやっていましたね。
昆 それが間違っていると気づいたのはなぜですか。
伊藤 レストランもやっていたからだと思います。レストランにいらっしゃるお客様の言葉を聞いているうちに、だんだんお客様のほうが正しいと思うようになりました。そうしてプロダクトアウトではなくマーケットインの経営をしないといけないとわかってきました。レストランをやっていなかったら、今の私はなかったでしょう。
昆 お客様によって育てられたのですね。
伊藤 はい。お客様とはただ商品を売り買いする関係ではなく、一緒に農業や食料や環境の問題を考えることができるようになりたいですね。日本の農家の作物を買うことは日本の農地、つまり、環境を守ることなのだと。
事業は継続するために利益を追求しなければいけません。ただし、その事業には理念や目標があって、それを達成することによって取引先も自分たちも潤い、得た利益を使って社会貢献し、社会貢献をすることでまた商品が売れていくということが基本だと思います。

昆 それで理念を、伊豆沼農産の農業を産業化するという意味から、農村を産業化するという意味に変えたのですね。
伊藤 農村には食べもの以外にも資源が限りなくあって、その価値も見えてきました。それを産業化するために、まずは地域のなかで盛り上がっていきたいと思います。

関連記事

powered by weblio