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編集長インタビュー

「農村経営者」の産業創造力 地域独自の価値をいかに見出し活用するか



「伝え人(つなぎ人)」が果たす大きな役割

昆 都会の人を受け入れる施設をつくりましたよね。
伊藤 はい。「生ハム体験工房」と「都市農村交流館」を含めたラムサール広場です。都会の人が生ハムのオーナーになったり、畑のオーナーになったりすることもできます。子どもたちが裸足で歩けるような芝生もつくりました。また、豚、羊、山羊などの家畜を放牧し餌を与えて育ててもらいます。あえて「その家畜を何月何日に食べますよ」と伝え、「いのち」の大切さを知ってもらう「場」にしようと考えています。伊豆沼周辺の渡り鳥や植物などを紹介するネイチャーツーリズムなどのプログラムも計画しています。
昆 そういうことを伝えたり指導したりするのは、伊藤さんが「つなぎ人」と呼ぶ人たちですか。
伊藤 はい。「つなぎ人」として、地域のお年寄りに活躍してもらいます。「つなぎ人」は、食と農、都市と農村をつなぐ人のことです。食農教育といっても食と農が離れていますよね。それをつなぐ人が必要ではないか。そんな発想がきっかけになりました。宮城県に提案して、「つなぎ人」から「伝え人」に呼び方は変わりましたが、知事の名前で認証を発行してもらうようにしました。食と農に限らず、お年寄りが得意な竹とんぼの作り方なども伝えます。
昆 そういうことを求めるお客さんにお応えするのが商売人でしょう。田んぼや畑だけを提供するのではなく、ここの風土全体として舞台をつくり、シナリオを書き、演出もされていますね。
伊藤 農村の価値が見過ごされてきたわけですが、私は価値の見つけ方があると思います。1つめは、角度を変えてみる。正面や上から見ていたものを、後ろや下からも見るというように、角度を変えると形も変わるかもしれません。2つめは、組み合わせを変えてみる。歩いているだけなら、ただのおじいさんですが、稲ワラを持たせると、しめ縄をなえるとか、見えなかった技術を見つけることができるかもしれません。3つめは、よその人に来てもらう。地域を見てもらうことで新しい価値が発見できるかもしれません。
人・モノ・環境という3つの大きな資源を角度や組み合わせを変えていく作業を繰り返すことが大切だと思います。そうすることで、今まで「この地域には何もないです」と言っていた人が、「こういうのもある、こんな人もいる」と話せるようになって、なんとなくその地域が面白い地域になっていく。新しくつくった都市農村交流で、よその人と「つなぎ人」をはじめとした地元の人とが交流していってほしいと思います。

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