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特集

消費構造の変化に伴う 宅配ビジネスのいま


今回のテーマである宅配ビジネスを考えた場合、購入者は金銭的に余裕がある世代になる。贈答用に代表される果実類の宅配は主に高齢世代によって成り立っているのだろうが、将来的にはその次の世代を対象にしていかなければならない。いずれにしても狭き門だ。
そんななか、宅配ビジネスに注力しながら現状に立ち向かっている3戸の農業経営者のほか、本テーマとは関係しないが、販売単位の大きいミカンを扱うJAの動きを取材した。時代の変化に応じて彼らはどんな行動を起こしているのだろうか。併せて、読者アンケートの結果も掲載しておく。

「いいものを少なく」

茨城県土浦市にあるJR常磐線の神立駅に降り立つと、(株)四万騎(しまき)農園の兵藤昭彦さんが車で出迎えてくれた。昭彦さんが運転する車で10分ほど走り、昭彦さんが父の保さんと経営する、かすみがうら市の農園にたどり着いた。
広々とした園内には栗の木がかなりの間隔をとって植えられている。いが栗をつけた木々は青々とした葉を茂らせ、その向こうには青空が広がるといった、なんとも伸びやかな景色が広がっているのだった。

【キロ5000円の生栗】

園地の広さは15haに及ぶ。この広々とした園地で「石鎚」「銀寄」「岸根」など10品種にわたる栗の栽培とそのほかの苗木を生産している。また、自社で生産した生栗は後ほど紹介するように加工品にしている。自社の園地で収穫した生栗は1kg当たり1800~5000円で販売している。

【トンからキログラム、そしてグラムへ】

四万騎農園は高価格の栗をどう販売してきたのか。保さんは次のように明快に説明してくれた。
「トンからキログラム、そしてグラムに変わっていった」
生栗についてはかつて市場に出荷していたが、40年前にそれをやめた。代わって個人からの注文を相手にする宅配と園内にある店頭での販売を始めた。さらに、30年前に生栗を原料にした瓶詰めの渋皮煮やふくませ煮、ジャムを開発、販売している。
市場出荷から宅配に変えたのは、ヤマト運輸が1976年に全国で初めて宅配便を始めたことがきっかけになる。それまで運送業界では大口の荷物を一気に運ぶほうが合理的という考えが常識だった。ヤマト運輸の小倉昌男社長(当時)は「小口の荷物の方が、1kg当たりの単価が高い。小口貨物をたくさん扱えば収入が多くなる」と確信し(同社ホームページより)たことで、宅配事業に着手した。それまで個人が荷物を送る場合は6kgまでなら郵便局に、6kg以上なら国鉄の駅に持ち込まなければならなかったのだ。保さんはこの流通革命にすぐに乗った。

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