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岡本信一の科学する農業

現状と目標は数値でつかめ

農業には水耕栽培や培地を利用した栽培方法もあるが、多くの栽培では土壌が必要だ。その土壌にはまだわからないことも多いが、私はこの連載で土壌硬度の重要性について述べてきた。今回、改めてそこを指摘しながら、農業者が耕したり、有機物を投入したりすることの意味をもう一度根本的に考えてみたい。
耕起や有機物投入は土壌を栽培に適した状態に変化させるためであるという認識をまず持ちたい。そして、農業が経済行為である限り、これらの工程は、経済的に見合う必要がある。その観点から考えると、最小限の努力で最大の効果を得ることが目標となる。これは言い換えれば、できる限り何もしないほうがよいということになる。

土壌硬度をグラフ化すれば耕起の効果を比較できる

次ページのグラフ(図1・2)を見ていただきたい。これは、しばらく放置されていた圃場を耕起して栽培を行なったときの土壌硬度のデータである。縦軸が深さ、横軸は硬度であり、数値が高くなればなるほど硬いことを示す。土壌硬度の測定時期は、耕起前、植え付け時(耕起後)、収穫時である。
まず図1。耕起前は、どの深さでもおおよそ1~1.5MPaの範囲に収まっている(MPaはメガパスカル)。これは、一般的な作物にとって若干の抵抗はあるものの十分に根を伸長させることが可能な硬さだ。
次に植え付け時を見ていただきたい。15~20cmの深さまでは非常に軟らかく、それより下層で急激に硬度を増している。これはロータリー耕を過度に行なった場合の典型的な曲線である。ロータリー刃に掻かれた表層は非常に軟らかくなる一方、その下は刃に叩かれて硬い層(いわゆる耕盤)ができ、さらにその下の土壌をも固めてしまっている。これは、適正な土壌硬度という観点から見ると、耕起前よりも悪化している。

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