ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

特集

消費から見た日本農業の可能性



「大学卒業後、通販会社に勤めた後、コメ問屋に修業に出ました。実家だけでなく、街の米屋は営業エリアが限られているでしょう。しかも見通しは暗い、未来はない。これでは普通に米屋を継いでもおもしろくない。ただ、利き米や精米のノウハウは蓄積されていました。これを活かしてネット販売に参入したわけです。一種のスピンアウトですね」(社長の橋本隆志氏)
コメの通販自体はすでに当たり前となった。八代目儀兵衛がパイオニアというわけでもない。しかし、同社ほどイメージ戦略を徹底させているところは少ないのではないか。橋本氏自身も、メディアに露出するときは和服姿が多い。もっとも、普段はラフな洋服が多いらしく、今回の取材でもそうだった。
儀兵衛は通販サイト自体も他とは趣が異なる。まずは伝統的な京都という統一のイメージ。商品名も、葵・祇園・東山といった京都にちなんだものが大半を占める。
コメ販売では産地と品種を前面に押し出すのが通例だろう。加えて最近では特定の生産者名を「売り」にするところも増えてきた。ところが儀兵衛の場合、売っているのは誰それが作ったコメというより、儀兵衛が「選定・加工」したコメなのだ。定評のあるコメや価格に見合ったコメを右から左に流すだけではない、商品開発=付加価値づけがなされている。
ギフト用のヒットシリーズ「十二単(じゅうにひとえ)」を例にとってみよう。用途別の詰め合わせだ。極・結・和・洋・中・健(雑穀ブレンド向き)・鮨・丼・煮(炊き込みご飯用)・餅・粥・玄。名称だけでも用途は見当がつくに違いない。これら12種類のすべて、あるいは何種類かをピックアップして一つの商品とする。しかも、それぞれ色違いの風呂敷で包むという凝りよう。まるで十二単の重ね着のように美しい。別のシリーズでは、西陣織で包み桐箱に入れ、祇園祭で使われる笛のケースと同じ組み紐も結んだものさえある。
ちなみに十二単のうち、2合(300g)のパックを12種すべて詰め合わせたものは5000円(税別)。これを5kgに換算すると約7000円になる。詰め合わせギフト一般としてはよくある価格設定ではあっても、普段家庭で食べられているコメに比べれば、段違いに高い。
しかも十二単の表示は「複数原料米」。基本的にはブレンドということになる。スーパーなどで売られている複数原料米は、単一品種米に比べると価格が安い。というより最低価格品で、業者の在庫処分という側面もある。イメージとしても「安い、まずい」が定着してきた。コメ通販業界でも、ブレンド米の扱いはたいてい小さい。

関連記事

powered by weblio