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今月号からは、貸借、損益の読み方を応用して、2表を合わせて読むポイントを解説していく。今回は資本力と収益性の分析を取り上げる。
資本利益率で収益性を見る
図3に2つの農場の財務2表(概略)用意した。自己資本比率は、農場Aが60%で、まず健全と判断できる。一方の農場Bは20%と低く、財務状態は赤信号。しかし、農場Bは売上高利益率、総資本利益率ともに、農場Aの倍の収益性がある。
収益性を見るのに一等先に注目するのは、売上高利益率である。露天商のように、店構えや店子(たなこ)料がほぼ同じであれば、おでんであれ、やきとりであれ、原価や労働時間、技術などの違いはあれど、収益性の判断は利益率に要約される。
では農業経営ではどうか。土地、資本、労働に代表される経営資源の量や質の違いに始まり、作物構成や販売方法に至るまで、経営形態は言うまでもなく千差万別である。経営の利益目標も異なる。だが、共通して気になるのは「投資した資本に対して、どれだけ利益を上げたか」ではないだろうか。これを資本利益率といい、一般企業でも重要視する。
農場Aでは、総資本(総資産)に対して、利益は10%である。農場Bでは50%と高い。同じ200万円の資本に対して、利益の上がり方に差が生じている。農場Bは負債率が高いものの、総資本利益率が高い。言い換えると、負債による投資は多いが、きちんと投資が利益を生む経営となっていると考えられる。
売上高利益率も同様に農場Bが優れている。投資に対する利益獲得能力に優れた経営だとわかる。
また、総資本100万円に対して、利益がいくらか、「投資単位当たりの利益」も考えてみるとよい。資本100万円に対して、農場Aでは利益は10万円、農場Bでは50万円である。農場Bのほうが効果的な投資だと感じる。
投資に対する利益を考える
さらに図4に30ha経営の個人経営の分析事例を載せた。まず、財務2表から6つの数字を抜き出し、次に収益性を示す指標を計算した。
ただし、利益の算出方法は個人経営と法人経営では異なる。法人経営では経営者自身の報酬も費用に含まれ、純然たる利益として資本利益率を求めることができる。しかし、個人経営では経営者自身の取り分である「事業主勘定」を除いた部分を、利益として求めるとよい。
総資本利益率は2・2%である。土地利用の農業形態では一般的に低い。いまは低金利時代であり、預金をしたからといって運用利益がたくさん生まれるわけではないが、総資本利益率が一般的な金融商品より低いのは考えものである。
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齊藤義崇 サイトウヨシタカ
1973年北海道生まれ。栗山町在住。昨年、普及指導員を退職し、実家の農業を2014年から営む。経営は和牛繁殖、施設園芸が主体。普及指導員時代は、主に水稲と農業経営を担当し、農業経営の支援に尽力した。主に農業法人の設立、経営試算ソフト「Hokkaido_Naviシステム」の開発、乾田直播の推進、水田輪作体系の確立などに携わる。
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