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新・農業経営者ルポ

オーガニック大豆の大規模経営を実現させた「脱固定観念」発想

有機栽培は小規模経営が当たり前。こんな常識がいまでも日本ではまかり通っている。この常識を覆したのは、北海道比布町に拠点を置く(有)営農企画・今城正春だった。耕作面積は大豆だけでも70haに及ぶ。70aでも7aでもない。40代半ばで農業に転身した今城の、飽くなき挑戦を続ける原動力に迫る。                            文・撮影/加藤祐子
(有)営農企画が農場を構えるのは、今城正春が生まれ育った北海道比布町。上川盆地の北西部、旭川から北東へ約20kmに位置する小さな町である。現在は町内の耕作面積約2100haの1割に相当する約200haで、大豆や小麦、ソバ、さらにトマトやカボチャなどの畑作野菜を生産している。
倉庫の内外に並んでいるのは、ジョンディアの310馬力の大型フルクローラートラクター、6m幅のパワーハロー、ガスパルドの6条植えの真空播種機、同じく6m幅のカルチベーター、ケースの刈幅5mの大型コンバインなど、いずれも時速10kmという高速作業が可能な機械装備。さらに乾燥機は80石用が6基と100石用が2基、大豆クリーナーが4台という乾燥調製設備がそろう。
このダイナミックな畑作機械体系で生産しているのは、オーガニック大豆である。多くの日本人がイメージする「有機栽培」の域をはるかに超えているのは言うまでもない。今城が生産する大豆や小麦は、原料または加工品として、東京のオーガニック専門店に出荷されている。
「農業はこうでないと、という固定概念を持ったらダメだよね。時代の情勢や気象が変わっていけば、別の方法で儲かるものがいくらでも出てくるよ。お客さんの需要に応えていればね」
時代の流れを肌で感じて、常に新しい需要を見いだし、そのために必要な技術を磨くという生き方に裏付けられた発想である。一度は離れた農業の世界に再び魅力を感じ、飽くなき挑戦を続けている原動力はどこからわいてくるのだろうか。

建具屋、木工の職人から
40代半ばで農業経営者に

今城が農業の世界に足を踏み入れたのは、いまから約20年前。40代半ばでの転身だった。父が他界し、いったんは母が引き継いだもののやりきれないということで、農地を誰かに貸すか、売却するかを判断するときが来たのだ。兄弟は姉と3人の妹と女性ばかりで相続したいという話はなかった。熟考を重ねた結果、自ら農業経営者になる道を選び、転機を呼び込んだのである。

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