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新・農業経営者ルポ

オーガニック大豆の大規模経営を実現させた「脱固定観念」発想


「大豆はタンパク源で畑のお肉という感覚があった。人類の食事には必要なものというのが大豆に力を入れようというきっかけだった」
小麦より将来性を見込んだ大豆に注力した。1年目は経験不足から草に悩まされたが、3年目には、自らの土地も含む大豆の受託面積が約80haになっていた。高齢化でコメづくりをやめる人が全作業を委託してくれるようになり、一気に作業受託が進んだのだ。
そのころになると、「転作で儲かる」ということが伝わり、町内に転作作業受託組織が2つほどできていた。同時に、奨励金目的の捨て作りを防ぐ仕組みができ、大豆栽培も増えていった。

近隣農家と差別化して
大豆の有機栽培に挑戦

土地を購入し、受託が増えて、作業面積が増えてきたとき、今城は自分がつくった大豆と他の農家の大豆に大して違いがないことに満足できなくなっていた。
「化学肥料を使って栽培していては、苦労してつくっても、みんなと同じだ。何か人と違うことはないか。有機でつくれば差別化ができるのではないか」
これが有機栽培に挑戦を始めたきっかけである。さっそく書籍や雑誌を読みあさり、光合成菌や微生物などの知識を深めた。しかし、有機栽培に用いる資材を買い求めようと調べてみると、微生物資材にしても少量販売で高価なものばかり。しかし、原価はそこまで高価と思えなかった。そこで必要な資材の調達も自ら引き受けることにしたという。
ここで、かつての堆肥づくりの経験が活かされることとなる。最初は畜産由来の糞尿を集めて堆肥をつくっていたが、試行錯誤を重ねた結果、キノコのオガ粉を調達し、自社で排出する大豆のクズ、米ヌカなどと混ぜたぼかし肥料にたどり着いた。さらに農協が堆肥事業から撤退することを聞きつけ、さっそくその跡地を購入し、堆肥を大量につくるための場所を確保した。大量につくってフレコンバッグに密閉した堆肥は2~3年保存しても性質が変わらない。
「僕は学者じゃないから実践で身に付けてきたことしかないけれど、作物はバランスのいい養分を土壌の中につくってあげれば、味は乗ってくると思う。乳酸発酵させたぼかしを土と混ぜて、空気と水分を遮断するようにビニールを貼る。1週間くらいして、それをはがすと菌種で真っ白になる。微生物の状況が変わって、病気もつかないよ」
有機栽培の現場でよく耳にする「土づくり」などの栽培技術の話題を自慢する節は見られない。しかし、近隣の有機栽培圃場では、堆肥の多投入によるスリップス(アザミウマ)だらけの作物が増えていると懸念している。窒素過剰が病原菌や虫を引き寄せる。そうした最低限の知識がなければ、成功しないというわけだ。

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