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特集

乾燥野菜の進化形 チャンスをとらえるヒント集


こだま食品(株)(広島県福山市)

食品から水分を抜けば乾燥食品になる。乾燥キムチさえ商品化されたことがあった。なんでもあり。とくに最近はその傾向が強い。伝統的な乾物にとらわれず、新製品が次々と登場してきているのだ。乾燥野菜は、農産物のマーケットとしても見逃せない存在になってきた。まずは、伝統乾物の枠を飛び出した乾燥野菜の一例を紹介しておこう。

【画期的となった
粉末大根おろし】

数ある乾燥野菜のなかで、切り干し大根はとりわけなじみ深い。同じダイコンが素材でも、大根おろしは食べる前に家庭内でおろす。おろして売っているのは見たことがない。
使い方はいくらでもある。サンマの塩焼きには定番の添え物。ソバつゆや天つゆにも入れる。しぐれ鍋や煮物にも。主役ではないにしても、ないと寂しい。あれば脂っこい料理でもあっさり食べられる。いわば使い勝手のいい味な脇役。
ただ、ダイコンをおろすのは結構面倒くさい。食べたいと思ったときに限ってダイコンがなかったりする。おろす手間が省けて保存でき、思い立ったらすぐ使える。そんな常備菜があればいいのに……。
にもかかわらず、粉末(乾燥)大根おろしがなかったのはなぜか。ひとつには、「ダイコンおろしは家庭でつくる」という固定観念が邪魔して盲点になっていたのかもしれない。もうひとつは、ダイコン独特の辛みを保つことの難しさ。フリーズドライの大根おろしは以前からあった。しかし、辛みの問題をクリアしていたとはいいがたい。辛みと清涼感の抜けた大根おろしは、煮物にするならとにかく、気の抜けたビールみたいなものだろう。
その難しさを克服して粉末大根おろしを製品化したのが広島県福山市に本社を構える「こだま食品」だった。当初は、試験製造ではうまくいっても、量産が難しかったという。そこで開発導入されたのがエアードライ(熱風乾燥)を使ったEP製法(エンザイム・プリザベーション)と呼ばれる技術。この装置によって、酵素(辛みのもと)やビタミンCを残したまま製造することが可能になった。
この新商品は「さっ速おろし」とネーミングされた。キャッチフレーズは「大根おろし革命」。発売は2007年だった。ちなみに原料のダイコンは100%国産、添加物も一切使用していない。画期的な製品として評価も高く、数々の受賞にも輝いた。
じつをいうと、現在も販売継続中ではあるが、「さっ速おろし」の業績は低迷ぎみらしい。ただ、乾燥野菜の進化を目指した果敢な挑戦として記憶に残る。

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