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実践講座:したたかな農業を目指す会計学 続・入るを計り出を制す!

第十一章 貸借と損益の活かし方(2)収益性のさらなる見極め方


これが1年間の経営活動での資金の流れ(キャッシュフロー)である。これを「資本の循環」、または「資本の回転」と呼ぶ。農業における生産活動は言い換えると、資金回収活動である。そして、資金管理とは経営者が考えながらこの資金を動かしていくことを指す。
農業経営では、固定資産への投資が多く、その回収には時間がかかる。機械・施設は、会計的に考えれば、回収できるのは減価償却費の部分だけで、また必要不可欠な農地は、売却しなければ、本当の意味での資金回収はできない。
土地や機械、施設などの固定資産への投資(購入)は、生産活動のために重要だが、負債による資金調達に頼ってばかりいると、経営を圧迫し、資金滞留の一番大きな要因にもなり得る。とくに農地の購入による規模拡大は、農業経営で最も気を配るべき投資である。
もちろん、生産資材についても同様である。生産・販売活動に直接成果をもたらさない物に金を無駄使いしていると、じわりじわりと正味の運転資金である、現金や預金を減らす。生産ロスは、小さなことから大きな綻(ほころ)びとなるので注意していきたい事項である。
下手くそな資産運用とならないためにも、(1)技術と生産目標の明確化、(2)不足財の予算編成、(3)購入前のリサーチを欠いてはいけない。
会計期間は1年である。その間に調達→運用→回収→返済の4つの過程と資金循環を意識しよう。理解されていると思うが、資金管理の基本を再確認しておきたい。

資産をフル回転せよ!!

前回は利益を中心に解説したが、今回は2つの農場の資本回転と収益に重点に置き、6つの数値から収益性を見ていくことにする(図2)。資本回転率とは、投下された資本が1年間に何回転したかを見る指標である。パーセンテージではなく、回転数で表す。では、基本となる総資本回転率から始めよう。
総資本回転率とは(資産)に対して、収益が何回転したかを見る分析項目で、ここから資本効率を見ることができる。一般的に1.0以上が目標となる。農業経営では、土地や大家畜への投資が多い場合は1.0をなかなか上回らず、0.7程度である。A農場は200万円の資産に対し、収益は100万円である。総資本回転率は0.5と低い。一方のB農場は、A農場と同じ資産だが収益は200万円あり、総資本回転率は1.0で、収益を上げるための資本の効率は良いと判断できる。
次に自己資本に対する回転率も見てみよう。A農場の自己資本は120万円だから、自己資本回転率は0.8となる。B農場では自己資本が低いのが課題で、自己資本回転率は5.0である。この自己資本回転率は、自己資本と売り上げが同時に減少して業績が悪化すると、分母も分子も減るので比率が変化しないこともある。その場合はとくに注意が必要である。

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