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新・農業経営者ルポ

家族でできるからこその農業

静岡県の富士宮市で(有)いちごやさんを経営する佐野光司。地元にある4店舗の大規模量販店に「いちごやさんのイチゴ」というポップ入りの販売コーナーを与えられ、そこに日配で朝取りイチゴを出荷する。摘み取り園を兼ねる直売所という経営スタイルの実現は、13台のイチゴの自動販売機が始まりだった。取材・文/昆吉則撮影/編集部
消費者の喜ぶ顔を見るために完熟イチゴを地元に提供

「お目にかかってお話しするのは良いけど、私なんか取り上げるに足りる存在ですか?」

 少し照れ臭そうに筆者を迎えた佐野光司(59歳)の顔には、その人柄がそのまま表れていた。実直で控えめで、ひたすらにイチゴ作りに打ち込んできた佐野。自然体で農業に取り組むことで、いつの間にか農協のなかでも最大規模の生産者となり、農協のイチゴ部会会長になっていた。

 しかし、そんな佐野も市内各所に置いた自動販売機での直売が伸びていき、さらに地元量販店からの誘いをきっかけにして農協出荷を止めてしまった。農協に出荷するイチゴがなくなってしまったと言ったほうが正しいほど、お客さんの支持があったのだ。

 農協出荷に対する不満はあっても、現実に農協出荷を止めるという結論を出すまでには、夜も眠れなくなるほど悩んだ。

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