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新・農業経営者ルポ

家族でできるからこその農業

 これまでも知り合いのケーキ屋さんに加工を頼み、「いちごやさんのケーキ」を売っていた。しかし今は、結婚してこの仕事を夫の弘樹(35歳)とともに継いでくれた娘・恵(32歳)がそれに取り組むことになっている。彼女は調理師免許を持ち、生産者であればこそのイチゴをふんだんに使った自家製ショートケーキを商品化しようというのだ。忙しいシーズンに直売所の販売担当者でもある恵がそれに取り組むとなると人手の問題もある。それでも、ケーキ作りを考えて小さな直売所のなかに販売コーナーとは別室になった調理場を備えてある。


家族農業を守るための自覚的な経営改革

 (有)いちごやさんの仕事の役割分担は、佐野が生産全般、妻の芳子(57歳)が経理と配達。娘婿の弘樹とタイ出身の研修生が現場を担当する。忙しい時期にはパートを雇うが、基本的に家族でこなす経営である。イチゴの生産規模を拡大するよりは、加工などの商品開発やサービス開発によって収益性を高めたいと佐野はいう。

 佐野は、家族で楽しくやれる仕事、それが農業の良さだと考えている。今から40年前にイチゴを始めて現在のきっかけを作ってくれた父・章一(82歳)と母・かつ代(82歳)には特に仕事を頼むわけではないが、今も楽しみながら作業を手伝ってくれる。1歳半になった孫の美希子を囲む家族の暮らしを大事にしたい。そんな暮らしができるのも農業だからだろう。

 佐野は65歳で引退し、弘樹・恵夫婦に㈲いちごやさんの経営を継承してほしいと考えている。そして、その後は彼らの判断に任せるという。自分に農業を通してのチャンスを与え、そして自らが良しと思う生き方を認めてくれた父と同じように。農協出荷を止めることに悩んでいた時、父の世代であればこそ農協や地域とのかかわりにこだわるであろう章一は「お前の思った通りにすればいい」と言ってくれた。

 農家であること、農業という仕事を現代という時代のなかで続けていこうと思えば、農家としてのあり方を自覚的に変えていかねばならない。自分がそうであったように、弘樹と恵にも守るべきものがあるからこそ自己改革の意思を持ち続けてほしいと考えるのだ。まだ農業を始めて数年に過ぎない弘樹であるが、イチゴ作りへの思い入れが深まってきているのを佐野は気付いており、それが何よりも嬉しい。

「私なんか、顧客開拓にまわって事業を拡大していけるような柄でもない。ただ、イチゴ作りに夢中になっただけですよ」

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