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編集長インタビュー

幸せの芽を伸ばし育てるという園芸学者的幸福論

古在 壮大な話ですね。ただ、日本においてはそのようなことが言えるかもしれませんが、世界各国を見渡せば、飢えに苦しんでいる人々がいるわけです。ですから、昆さんがおっしゃるところの過剰、それゆえの病理が日本にあるのであれば、欠乏しているところに分け与えることで、解決されるような問題なのではないでしょうか? もちろん、単に日本が貧しい国に食料を供給すれば解決できるというような意味ではありません。しかし様々な形で、かかわり合いを持つことによって、過剰の状態から脱却していけると思うのですが。

昆 ただですね、人々は一度便利さや快楽を経験するとやめられないように、ただ減らせばいいという話ではないですよね。今よりも貧乏になるのを望むことはありえないように思うんです。時として不便さを味わうことは望んだとしても。

古在 その点については、私と昆さんとは見解が異なりますね。やっぱり価値観がまったく違う人がいる以上、言い切るのは問題かなと思います。しかも、先ほど述べたように物質的価値ではないものを求める人が増えてきています。農家の中に、自分の人生の喜びを売り上げや収入ではなく、田んぼにカエルがいる環境に喜びを見出す人もいるわけですし、農薬・肥料メーカーだって自社の利益だけを考えるだけでは行き詰まっているじゃないですか。

昆 ええ。

古在 自分にとって何が幸福なのかを問い直し、実践している人々が増えているということなのです。私自身もそうです。大多数の人間が求める価値観とは違うものを求める人々はいるわけですから。

昆 なるほど。私は大多数の人々の価値観は変わらないんじゃないか、農業の世界では変えていくべき役割を担っている人が変えていくしかないという考えですので、その点では先生と私の意見では相違がありますね。ただ、それぞれに見つめる社会の変化の中で、農業に求められる役割も、同様に変わっていかなければいけないという意見では、同じではないでしょうか。

 たとえば、本誌読者が行なっている直売所や体験農園がそうです。先生が現在所属する環境健康フィールド科学センターにおいて、農業・医療・環境など学問の垣根を越えて研究がなされているというのも、時代の変化に呼応した形での新たな農業を模索されているからこそなのだと思いますが。

古在 確かに、それについては私も異論がありません。また、これからの農業をいい方向に変えるためには、これまでタブーとされたことを見直すべきでしょう。農家への批判も、してはいけないのもタブーのひとつですが、農家、農業の健全な発展のためには、何が正しくて悪いのか、見直す必要があるでしょうね。

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