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特集

農産物「規格」を考え直す いまこそ民主導への転換を!




米国の“穀物規格”戦略の本質
規格自体が世界への穀物流通の営業ツール
官か民かという問題は超越

結論からいえば、官民の多層的な合意形成が効いている。官か民かという問題を超え、マーケットの需要の実態に合わせて運用されているのだ。それ以上に、規格自体が米国産穀物を世界に普及するための“営業ツール”になっている。
規格の決定から、等級、品質及び重量検査の手法と情報を提供するのがGIPSA(穀物検査・出荷業者及び倉庫業者管理機関)である。
その設置目的は以下のとおりだ。
「マーケットの統合性を確保」「公平で透明的なマーケットを確保」「品質管理の契約条件をマーケットに提供」「世界中の売買業者に対し、日々取引する穀物の種別と品質についての標準的なコミュニケーション手段の提供」「そのために、慣行的かつ革新的で、一貫した検査サービスを提供・維持」「連邦、州、民間レベルを超え、穀物検査について国際的なサービスと普及プログラムを提供し、米国産穀物が海外顧客に流通しやすいサービスの実施」
以上の実施体制として、国内向けには連邦、州、民間の研究機関に対して、検査手法とシステムが共有され、その改善が行なわれる。海外向けの品質確保のためには、GIPSA内に連邦穀物検査サービス(FGIS)が設置され、同部署が輸出される穀物貨物について全量検査する体制が整っている。

【官民一体のコスト・シェア
による海外販促】

小麦を例に挙げよう。米国の小麦生産量は国内需要の2倍ほどだ。つまり、生産の半分が輸出用であり、米国小麦産業の生命線なのである。検査システムが厳しいだけでなく、海外への米国規格の普及を行なっている。具体的にどうなっているのか。
まず、先ほど述べたFGISの検査結果は、海外バイヤーに対し、等級と品質スペックの公的認証制度として機能している。次に、小麦の種別と産地(6種類、詳細は図1参照)別にサプライチェーンが構築され、生産地から輸出される港のターミナルまでの鉄道網と荷船網が長年かけて構築され、その間の検査体制が確立されている。品質規格は各種別ごとに5段階ある。
そして、輸出される米国産小麦について、海外バイヤー(製粉業者、加工業者、製パン業者、政府機関等)に対する6種別及びミックス小麦の規格や品質価値、信頼性の説明を担うのが生産者団体である。小麦の場合、全米小麦アソーシエイツ(U.S.Wheat Associates)で、19の小麦生産州の農家が参加している。生産者の拠出金は、1ブッシェル (約27kg)当たり0,0028ドルとなっており、全体で約20億円(1ドル120円換算)が年間予算となる。生産者予算1ドルに対し、米国農務省(USDA)が2,5ドルを拠出する。こうして官民一体のコスト・シェアによる海外販促が行なわれる。

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