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一方、どうしても借入金で、事業拡張したいときは、目的や使途別の資金と返済原資の整理を怠らないことである(図3・5月号に掲載)。
たとえば、生活資金は住宅・自動車ローン、ときには教育資金などでかさむことがある。当たり前だが、これは所得で返済する負債である。必ず生活設計をしてみることだ。返済の見通しが立たなければ、家は建てないほうがいい。生活資金は家計費でやりくりするべきである。
同様に、農地資金は農産物の利益を膨らませることで、機械・施設資金は帳簿の減価償却費を超えない金額で、後ろ向き資金は完済するまで、積極的な投資を行なわない節約術でそれぞれ返済しよう。
経営規模を大きくしたいが、徐々に事業拡大をと思う経営者こそ、自己資金を経営に投じるべきである。「ゆっくりと成長した大木は、倒れにくい」と言われるように、現在10ha規模の経営が、20haの農地を負債で購入するという行動は無謀と言わざるを得ない。泥船にならぬよう、資金の運用については、帳簿を眺めて、焦らずに経営戦略を練ることである。
収益の2つの眺め方
6月号では、2つの損益計算書の様式を紹介した。表1の右側は勘定式で、左側が報告式である。勘定式は貸方に収益項目、借方に費用項目を記載し、仕分けと同様の勘定で表記する。もう一つの報告式は、最初に売上高を記載して、会計規則に従って項目別に加算と減算を行なう。
経営者が利益とらえる意義は、まさに経営改善に役立てることに尽きる。報告式の損益計算書には5つの利益項目が明示されているので、利益の生じる流れがわかりやすく整理されている。一般企業では、報告式を採用していることが多い。
とくに重要な利益項目は、「売上総利益」「営業利益」「経常利益」の3つで、営業利益(農業収益)をどう高めるかを考えるときに、この見方が有効となる。
資本は回転する
10月号、11月号では収益性に着目した。繰り返しになるが、経営を行なうには、資金が必ず必要で、資金なくして経営はできない。経営活動での資金の流れをキャッシュフローと呼ぶが、資金回収活動のことである。資金管理とは、経営者が考えながらこの資金を動かしていくことを指す。会計期間は1年。調達→運用→回収→返済の4つの過程と資金循環を意識することをいま一度確認しておきたい。
これまでの連載でとくに大切なポイントを、掲載した図表とともに振り返ってみた。経営管理の計数的なテクニックの習得は、皆さんの自助努力でお願いしたいが、考え方は常に頭の隅で思い返し、本年の決算を迎えていただきたい。
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齊藤義崇 サイトウヨシタカ
1973年北海道生まれ。栗山町在住。昨年、普及指導員を退職し、実家の農業を2014年から営む。経営は和牛繁殖、施設園芸が主体。普及指導員時代は、主に水稲と農業経営を担当し、農業経営の支援に尽力した。主に農業法人の設立、経営試算ソフト「Hokkaido_Naviシステム」の開発、乾田直播の推進、水田輪作体系の確立などに携わる。
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