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政策打てずに補助金バラマキばかり
本誌2008年7月号で取り上げた全農と三菱商事など3社によるヨルダン肥料の大チョンボ。不思議なことにこの情報がいまも省幹部には何も伝わっていない。
初めて耳にする読者に簡単に説明してみよう。農協が扱うアラジン肥料をご存知だろう。それを作っているのが、全農と三菱商事などがヨルダン企業2社と合弁で設立した日本ヨルダン肥料。格安肥料を製造するという目的で92年に設立した。肥料原料を安定・低廉に調達すべく、当時は国営だったヨルダン企業2社とジョイント。ところが06年のヨルダン政府による民営化で1社はブルネイの投資ファンドに、もう1社はカナダの会社に売り飛ばされた。
これにより安定・低廉は吹き飛んでしまった。その後、全農や三菱商事など関係者が、地球を駆けめぐって原料調達にご苦心なさっておられるのは、隠せぬ証拠ではないか。ただ当事者とも、よほどバツが悪いのか、大チョンボについてなぜか沈黙。三菱商事に至っては、肥料記者クラブでの質問にも全否定している(大嘘つき!)。
全農や三菱商事などの大チョンボをあげつらうつもりは毛頭ない。筆者がこれを取り上げるのは、世界的な肥料原料の高騰で貿易構造がガラッと変わったという点を訴えたかったからである。これを理解するか否かで肥料政策は変わってくると思ったからだ。
この事実を農水省は知っていたのか。筆者なりに検証してみた。当時、肥料業界を担当していたのは生産技術課(いまは生産支援課に統合された)。そこの課長に「チョンボ、知っていましたか」と担当者を通じて聞いてみたところ、「知らなかった」と認めてきた。
あまりにもアッケラカンとした様子なので、こちらが心配になり「本当に知らなかったの」と再度チェックを入れてみると、「実は7月に」と白状。その説明も核心には触れず、「硫黄の価格が上がったからとの説明を受けた」とお粗末な対応だった。
その7月というタイミングも、大チョンボに危機感を抱いた自民党代議士が急遽現地ヨルダンに飛ぶことになり、その際、全農や三菱商事などから、筆者の想像では「実は、合弁先企業の資本構成が変わりましてね」と聞かされたに違いない。
そこで「じゃ、その事実を局長、次官、大臣に報告したのかい」と質問を向けてみたら、「報告していません」という回答だ。事の重みがまるで理解できていない様子。担当課長は、出入り業者に完全に舐められているようだ。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
土門辛聞
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