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2015年センサスをその手法で計算し、2010年センサスと比較すると以下のようになる。
200万円以下の農家戸数の比率は2010年で72.6%であったが、2015年でも71.1%とあまり大きな変化はしていない。しかしながら、中間値を用いた販売総額は、2010年に12.5%であったものが、2015年ではさらにそのシェアを下げて7.9%と1割を切るレベルになっている。
一方、1000万円超層は、戸数でも2010年の7.4%から2015年では9.1%と着実に増加しており、中間値を用いた販売総額のシェアでも2010年の59.9%から2015年では72.8%とさらにその存在感を増している。
販売額1000万円以上の階層が総販売額の7割以上を稼ぎ出しているのである。
これまでこの調査は、読み方によっては「農家はいかに儲からないか」という印象を与えかねないと思い、本誌ではこうした読み変えをしてきたが、農水省も、こうした視点でこの統計の解説をするべき時代になっているのではないか。もっともそれは、政策効果とは言えないが。
読者諸氏にも、県や市町村レベルでこの計算をすることを勧める。
図7 農業経営組織別
農業経営体数の構成割合(全国)
農業経営組織別に農業経営体数の構成割合をみると、単一経営が79.5%となり、5年前に比べて1.1ポイント上昇した。また、5年前に比べて稲作単一経営は1.0ポイントの低下、果樹類単一経営は0.9ポイントの上昇、露地野菜単一経営は0.7ポイント上昇した。
『農業経営者』的読み方
稲作の単一経営が減らないのは、販売農家といわれる階層でも「補助金付き大規模家庭菜園」の趣味的生産の比率が多いからだ。この階層をどう変化させるかが水田農業改革のカギになる。また、この階層は少しずつ減少しているが、当分はこの傾向が続くと思われ、水稲経営に特化することの経営リスクをさらに考えていくべきであろう。
図8 農家数の推移(全国)
農家数は215万3千戸で、5年前に比べて37万5千戸(14.8%)減少した。このうち、販売農家数は132万7千戸、自給的農家数は82万6千戸となり、5年前に比べてそれぞれ18.7%、7.9%減少した。
『農業経営者』的読み方
販売農家数の減少自体、問題にすることではない。そもそも「販売農家」という概念は「経営耕地面積が30a以上または農産物販売金額が50万円以上の農家」であり、販売金額が0円でも販売農家とされる。販売農家のなかでのその比率は9.6%で約1割に達するのである。まさに「補助金付き大規模家庭菜園」というべき存在だ。自給的農家であれ趣味的農家であれその存在を否定するわけにはいかないが、少なくとも彼らを「経済主体」としての「販売農家」に分類し、正しい農業理解を阻む現在の農業統計のおかしさは問題にされるべきであろう。
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