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表5~7は、でん粉の主たる用途、需給などに関するものである。馬鈴薯でん粉は甘藷や小麦、トウモロコシ、セーゴ、タピオカなどと競合関係にあるが、質的に他のでん粉に劣るものではなく、品質特性が活用されて一定の需要を保つものと考えられている。
表8は馬鈴薯の生産費計算例である。他の作物に比較してとくに収益性が劣るものではない。今後離農が増えて1戸当たりの経営規模が拡大するものと予測されている。それに合わせて合理化すれば、収益性はさらに高まるといえる。
表9は品種別の作付け構成例である。でん粉用の新品種の育成が待たれるところである。欧米の馬鈴薯育種関係の人は、100年以上も前の男爵薯やメークインが現存していることに驚きを見せる。男爵薯を手に取ると、凸凹で目の深い品種がなぜ淘汰されないで残っているのかと問い質される。独特の風味が日本人の好みに合っていると答えても信用されない。凸凹で加工の困難な品種が残っているのは、育種が遅れているからではないかと言わんばかりである。
水稲や小麦、豆類の品種改良には驚くべきものがある。それに比較すると馬鈴薯は品種改良されているとしても、数も少なく、また目立つものもない。これは何に起因するのかを考えてみると、栽培面積に関係しているようである。要するにいまだにマイナークロップなのである。北海道で馬鈴薯の栽培面積が最も多かったのは昭和24年(1949)の9万3600haである。主食のコメが不足していた時代であり、食用として重要な役割を果たしていたからであろう。これが平成20年(2008)には5万5200haに減少している。収量が3倍になっているので、消費量が少なくなっているわけではない。都府県は2万6800haで合計8万2000haで全国ベースでも栽培面積はそれほど多い作物ではない。これから馬鈴薯の需要が増えるとは考えられないので、育種に大きなエネルギーを投入することはないのではないかと考えると、これは寂しい。馬鈴薯は食生活を豊かにしている作物であるので、なんとか工夫して新品種が欲しいところである。
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村井信仁
農学博士
1932年福島県生まれ。55年帯広畜産大学卒。山田トンボ農機(株)、北農機(株)を経て、67年道立中央農業試験場農業機械科長、71年道立十勝農業試験場農業機械科長、85年道立中央農業試験場農業機械部長。89年(社)北海道農業機械工業会専務理事、2000年退任。現在、村井農場経営。著書に『耕うん機械と土作りの科学』など。
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