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特集

来たれ!TPP【前編・基本講座】


繊維・衣類については衣類(HS61類と同62類)および中古衣類等(同63類)は生地がメンバー国の領域で作られた糸から作られている場合のみ原産品とされるとあり、これはNAFTAにおける「ヤーンフォアード(yarn-forward)」と呼ばれる方式を踏襲している。
原産地規則以外にも投資規定、ビジネス関係者の一時入国、政府調達、国有企業などについても日本企業にとってメリットのある規定が随所に見られるが、紙幅の都合からこれらの論点については稿を改めたい。

慶応義塾大学教授
渡邊頼純
(わたなべ・よりずみ)
元・日本・メキシコEPA首席交渉官。慶應義塾大学総合政策学部教授。上智大学大学院国際関係論専攻博士課程単位取得満期退学。南山大学助教授、大妻女子大学教授、在ジュネーブ国際機関日本政府代表部、GATT事務局、欧州連合日本政府代表部、外務省経済局参事官、外務省参与などを経て現職。著書に『GATT・WTO体制と日本』(北樹出版)、TPP関連では『TPP参加という決断』(ウェッジ)、『TPPと日本の決断』(編著、文眞堂)、『TPP交渉の論点と日本』(同)などがある。

【参考文献】
渡邊頼純『TPP参加という決断』
ウェッジ、2011年
渡邊頼純『GATT・WTO体制と日本』
北樹出版、2012年
浅川芳裕『TPPで日本は世界一の農業大国になる』
KKベストセラーズ、2012年
石川幸一・馬田啓一・木村福成・渡邊頼純(編著)
『TPPと日本の決断』文眞堂、2013年
石川幸一・馬田啓一・渡邊頼純(編著)
『TPP交渉の論点と日本』文眞堂、2014年
石川幸一・馬田啓一・高橋俊樹(編著)
『メガFTA時代の新通商戦略』文眞堂、2015年

Part2
TPP
農業界への影響と展望

TPP後も脱税オプションが残る豚肉業界の未来は不透明のまま。いまこそ、業界の健全化を自ら図る意識改革と行動を。

【TPP
農業交渉の評価】

TPPは農業交渉において“たるんだ”協定となってしまった。日本が重要5品目(コメ、麦、牛肉・豚肉、乳製品、砂糖)とする多くで、自由貿易の精神に反する管理貿易(国家貿易や差額関税など)の仕組みを残存したためだ。その結果、日本農業の成長機会を自ら閉ざしてしまった。
TPP交渉開始前から筆者が提言してきたとおり、日本がこうした「聖域」を戦略的になくしていけば、農産物の加工貿易が発展し、国内農業の需要が伸長するスタートラインに立てたはずだったが、結果は違った。低関税・中関税だった加工品のほとんどは数年で無税化の道をたどる。上述した「重要」品目は徐々に関税が下がるものもあるが、全般的に「聖域」が残ってしまった。

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