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新年特別企画

私のこれからの経営(後編)


しかし、差別化食品の生産が農業現場で難しい場合があります。たとえば、小麦などの原料はそれ自体を消費者が消費するわけではないので、消費者の味覚やセンスに直接訴えることはかないません。この場合には、それを加工して販売する加工業者においしさや新規性創造の役割を担ってもらうことになります。日本の食品加工企業は世界で一番味にうるさい消費者の好みに合わせるために日夜努力してきましたから、このような加工企業と協力し、徹底して生き残りを目指すべきことも重要な戦略でしょう。
TPP交渉においては極めておかしなことが起こりました。「日本農業は規模が小さいために国際競争力がない」と言い続け、そのために規模拡大に努めてきた日本農業の優等生であるはずの北海道の代表的な作物に関係する食品が競争力不足とされ、多くが保護の対象になっていることです。コメを除く砂糖(甜菜糖)や小麦、でんぷんなどはどれも北海道の代表的な作物に関係しています。
1971年に輸入解禁となったリンゴでは当初20%の関税であったものが段階的に引き下げられ、現在では17%になっています。しかしながら、生食用のリンゴの輸入はまったく増えておらず、ゼロに近い数値でしかありません。11年間かけて関税率をゼロにすることが決まったわけですが、硬くて酸っぱい輸入リンゴが今後も日本の市場で評価されることはまずないと予想されます。それよりも問題なのは、国産のリンゴがあまりに高値であるために、消費が低迷していることです。欧米では抗酸化食品の代表的な食べ物として高い評価を受けているリンゴの消費が日本国内ではなかなか伸びないのは、高齢化・少子化の影響もあるとは思いますが、生産性の向上によるコストダウンが進まない点にも影響されていると思います。欧米と日本のリンゴの生産性には3倍近い開きがありますので、欧米の技術を応用し、甘くておいしいリンゴの生産性を上げる努力をこれから11年間で達成していけば、日本の生食用リンゴは今後ともなくなることはないでしょう。リンゴはもっと価格が低下し、生産量が増加していけば、日本の戦略輸出商品に成長するかもしれません。
逆に問題なのは、北海道の甜菜糖やでんぷん生産のような保護対象品です。この二つともに共通していえることは差別化の余地がほとんどない生産体制を敷いていることです。砂糖に対比される塩ではどうでしょうか。塩のような一見差別化の余地がなさそうなものでさえ、「赤穂の塩」のような差別化品に日本の市場は席巻されています。

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