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実践講座:したたかな農業を目指す会計学 続・入るを計り出を制す!

第十四章 資金運用の分析(2) 資金繰り表を作成しよう!


年末年始は農業者以外の友人と杯を交わす機会が多かった。皆、総じて景気は悪くないと口にしていた。本来、経営者の設備投資も、政府の経済発表を受けて行なわれるわけではない。経営者は、必要なのか、買えるのか、借金を払えるのかで、投資するかどうかを決める。猜疑心や恐怖心を振り払い、ここぞと決断するときに、経済動向は参考にしかならないのだ。
TPPの発効は目前に迫る。主軸の個人消費と民間設備投資は高望みできない。日本には14兆円の経済効果があると語られているが、国際収支だけで達成可能なのか。今後の農業界にはどのような影響があるのか。もたらされる経済効果に期待したいが、それよりは自らの腕前を上げ、自己の経営に期待を持とう。そのためにまず取り組むべきなのは、これまで以上に資金の運用結果に関心を持つことではないだろうか。先月の資金繰りに引き続き、今月も経営者にとって大切な資金運用分析についての解説をしていきたい。

資金運用表から経営の
好転・悪化を見定めよ

経営における資金運用とは、元手を増やすために行なう投資のことである。元手とは運用できる資金のことだ。事業に見返りを期待し、投資をすることで利益がもたらされる。資金は借りるときもあれば、自己資金から調達するときもある。
たとえば、トラクターの購入を事例に資産運用を考えてみよう(図1)。どうしても必要となり、トラクターを新たに増やすことにした。購入資金は1000万円。この資金は負債で調達するとしよう。この場合、負債で調達した資金をトラクター、つまり資産(機械)に運用したことになる。
図2に資金運用分析の考え方を示した。経営活動の持続は資金運用なくしてあり得ない。その実態を経営者が把握しているかが大事な経営手腕の見せどころともいえるだろう。その資金運用の分析を手助けしてくれるのが資金繰り表と資金運用表である。
先月紹介した資金繰り表は、損益計算書が示す会計期間の損益と、正味の運転資金の量にはズレがあり、そのズレを示すものである。これに対して資金運用表は、貸借対照表の動きから、資金の調達と使途の動きをつかみとるために作成する。経営が好転しているか、悪化しているかを見定める一つの方法で、資産・負債・資本の移動量がどのように行なわれたのかを知るのに優れている。
資金運用表を作成する前にまず、期首と期末の二つの貸借対照表を用意して、比較貸借対照表を作成しよう。そこから勘定科目別に、残高の増減に従って、資金の「運用」と「源泉(調達)」の二つに整理していく。原則は、資金の使用経路を意味する運用には「資産の増加」「負債の減少」「資本の減少」の三つを、資金の調達経路となる源泉には、「資産の減少」「負債の増加」「資本の増加」の三つをそれぞれ仕分けること。この原則ルールは複式簿記の二面性と似ているが、重要なのでマスターしよう。

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