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ラピタやコンビニチェーンの収益は、経済事業の購買事業部門に反映する。後者は、ファミリーマートと合弁で「有限会社JAいずもアグリマート」(萬代宣雄代表取締役)を15店舗の運営会社として設立しているが、なぜか連結対象にはしていない。コンビニチェーンの収益は、そのままストレートに農協本体に吸い上げている。ここがミソだ。この決算方法だと、法人税などが軽減できるからだ。
コンビニを利用する客は、正組合員も准組合員も関係ない。一般の利用客をアテにして、いずれも集客効果が期待できる住宅地やロードサイドに立地。農協法には、員外利用についての制限がある。そうした一般利用客を規制する規定だ。経済事業の場合、「組合員利用の5分の1」(農協法10条)に制限されている。ラピタもコンビニチェーンも、農協法の精神と規定を明らかに逸脱した事業と言わざるを得ない。
旧JAいずもが、別会社を設立しながら、連結対象にしなかったのは、税金対策ではないかという見方もある。「有限会社JAいずもアグリマート」で決算すれば、所得(税引前当期利益)に対して23.9%の法人税が課税される。農協本体の決算に組み込むと、税金を減らすことができるからだ。まず協同組合への19%の軽減税率が適用される。企業の場合は、23.9%だ。本体に組み込むメリットはまだある。他の事業の赤字と合算すると、課税対象となる所得(税引前当期利益)が減り、税金を少なくすることができることだ。
そうやって税を圧縮することができるうえ、農協には、さらなる税制上の優遇措置がある。補助金だ。同じ図表を見ていただきたい。10年度から14年度の5年間で旧JAいずもが納めた法人税の平均は、「税引前当期利益」から推測すると、1600万円程度だろう。それも実質的にほぼ取り返している。国などからの補助金1400万円をもらっていた。まさに農協は、国内における「タックスヘブン」(租税回避地)といえよう。
農水省の総合農協統計表によると、全国の農協が13年度に受け取った国や地方自治体からの補助金は、368億円。一方、全国の農協が同年度に支払った法人税は335億円だった。固定資産税、事業税、市町村民税など諸税は、1016億円だった。農業協同組合の活動として得た利益(所得)に課せられる法人税は、補助金で取り返していることになる。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
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