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北海道馬鈴薯でん粉物語

現存する商系馬鈴薯 でん粉工場の奮闘


二代目は昭和61年(1986)に創業者から引き継いだが、普通のでん粉は自由化で価格が低迷していた。思案した挙げ句、でん粉に差別化をつけるべきとして「つぶつぶでんぷん」の製造を強化することにする。乾燥も従来の棚乾燥方式にこだわった。手間がかかるとしても次第にその内容が認められるようになったが、より違いをはっきりさせるため、偏光顕微鏡写真で粒子の大きさを比較して見せるようにした。合理化でん粉製法ではでん粉の歩留まりは良いとしても、画一的で個性がないものである。「つぶつぶでんぷん」でくず湯を作ると粘りがあり、放置しておいても水が染み出さない理由を説明でき、消費者を学理的に納得させることに成功した。
物余りの時代であればでん粉とて安ければよいというものではない。個性が強くあってよく、価値観にこだわる時代である。「つぶつぶでんぷん」の製造は差別化であり、その面では時代の要望に応えたというべきであろう。差別化はほかにもある。その一つはでん粉かすの飼料化である。でん粉かすはどちらかといえば邪魔物であり、どの工場も始末に窮したものである。当時、でん粉かすの水分は約95%であり、何とかこれを70%台に脱水しようと試みた。95%であれば畜産農家が運ぶとしてもトラックから水が滴り落ち、道路を汚すとして肩身の狭い思いをしなければならなかった。
その後、濾布プレスが開発され、75%に脱水することが容易になり、この難問は解決した。脱水により運搬が効率化したばかりではなく、乳酸発酵が円滑になって付加価値を高めた。小規模工場では高価な濾布プレスを導入することはできない。しかし、大量ではないので、遠心分離機で多少時間をかければよいことが判明した。
神野澱粉工場ではこの脱水でん粉かすをフレコンを使って乳酸発酵させることにした。これになどを混合し、完全配合調製飼料(コンプリートフィード)にして販売することにしている。邪魔物に付加価値をつけて販売するというのは小規模工場ならではの発想である。
そればかりではない。工場には原料を搬入すると約13%の土砂が付着して持ち込まれる。この遊離土砂も廃棄物処理法によってどこに捨ててもよいことにはならなくなってきた。さあどうするかといえば、工場から排出される水は一時貯留池にためるが、年数を経るとかなりの汚泥が沈澱する。この汚泥と遊離土砂を混合して堆積すると嫌気発酵し、害虫や病原菌は死滅する。これは自然の浄化機能を活用したものである。肥沃土として販売できるようになった。多少時間を要するとしても付加価値が高まり、邪魔物が有効活用できるのである。これも小規模工場だから可能な発想であるといえる。要するに無駄は考え方で省ける。

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