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特集

来たれ!TPP【後編・活用講座】


ただ、国単独で経済を循環させるのはその国が小さい場合、非効率になりがちだ。経済学では「規模の効果」という経験則がある。より広い市場で経済を自由化したほうが経済は活性化し、モノの値段は安くなり、国民の生活に寄与する。
また、海外で販売するために海外に工場を作っていたが、FTAにより関税撤廃や通関の迅速化などが果たされるため、わざわざ工場を海外に構えることなく、日本からの輸出で同じような競争力を持つことが可能になる。
工場が海外に出なければ国内に雇用も維持される。また、その工場と従業員が従来の地にとどまれば、その周辺のビジネス(材料を販売する会社や、周りの食堂やクリーニング店など)も維持される。そして、何より兼業農家の勤務先が維持されるのだ。農家にとってもFTAは雇用維持の重要な役割を果たす。
当然、負のサイドも存在する。経済の活性化は、「経済競争」によってもたらされるため、強い企業は勝ち、弱い企業は淘汰される可能性がある。安い商品が海外から入ってきたら、どうしても経営が維持できない産業も出てくる。FTAはこのように国に対して産業の選択特化を促すものでもある。
日本にとっての農業は淘汰される可能性があると思われている産業のようで、TPPの発効の代わりに保護政策を国に対して要望していた。この問題に関しては後で述べたい。

【日本が締結しているFTA】

日本が締結しているFTAには次のものがある。発効済みは、すでに使うことができるFTAで、署名とは、署名が済み、後は発効を待つFTAになる。アジアを中心としたFTAが多いのがわかると思う。

発効済
・ASEAN(インドネシア除く:AJCEPと呼ばれる)、ASEAN6との各国、ベトナム、オーストラリア、スイス、メキシコ、チリ、ペルー、インド

署名
・モンゴル、TPP(大筋合意)

交渉中
・コロンビア、カナダ、トルコ、
RCEP、EU、日中韓

【FTAのメリット:関税の低減】

FTAのメリットにはさまざまあるが、一番大きなメリットはやはり輸出時の関税低減だろう。ある条件を満たせば「原産地証明」が発行され、それを輸入側の税関に示せばFTAでの特恵関税が適用される。
では、具体例を見てみたい。図3は日本からマレーシアに輸出する場合だ。通常の輸出だと、日本の港を出るときの価額(FOB*1)が100だとする。マレーシアの港までは物流費と保険費が加わり、105(CIF*2)になる。関税はこのCIFに対してかかる。この図の場合、マレーシアでの関税は20%だから、CIFの105に対して20%の関税、つまりは21の関税がかかる。マレーシアの国内に入るにはそれ以外にもさまざまなコストがかかるが、それは無視すると、マレーシアにこの商品が入る際には100だったものが126にまで価額が上昇する。

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