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実践講座:したたかな農業を目指す会計学 続・入るを計り出を制す!

第十六章 生産原価と生産技術の改善(2)10a当たりの土地生産性


ここで一番気になるのが、10a当たりの長期負債金額が約14万円と大きいことである。平均10年で返済すると仮定すると、1年間の返済額約1万4000円がその間の利益から除かれることを示している。準備金制度など資金繰りが別の方法で行なわれていればいいが、2万円の利益の半分を超えているのは要注意だ。

部門別に課題を
ピックアップ

次に損益計算書を詳しく見ていこう。「費用」「利益」「収益」の3つの数値を作物ごとに仕分けし、部門別の土地生産性を算出する(図2)。前にも述べたが、間接・共通的費用は、簿記記帳の際に一律あるいは面積や労働時間に応じて部門別に按分しておかないと算出できない。
まず所得(当期利益)に着目してみると、経営全体の10a当たり2万円の利益に対して、営業外利益の多い小麦が約3万5000円と一番利益を上げているようだ。このように部門別の10a当たりの利益を求めると、規模拡大のときにどの作物を選択するのかを検討しやすい。
土地の規模拡大のとき、技術や施設・機械装備の過不足などに気持ちが向いてしまいがちだが、部門別の10a当たり利益の現状把握と予想は、投資規模を決めるときに一番にしなければならない事項である。
最適な答えだったかは、経営の流れができるまで長い時間を経たとき感じることになる。そのためには、1年1年の作付けが終わったときに改善点や課題探しができることが、規模拡大の成功の早道と思う。このとき前後の土地生産性の分析がものをいうことになろう。

規模拡大する際の心構え

土地利用作物を主体とする経営では、規模拡大志向の経営者が多い。生産原価からの土地生産性を把握し、その向上を求めなくては、農地の購入は一般的に難しい。各々の経営事情はどうあれ、いまの農地購入価格は、北海道とてまだまだ高いからである。
たとえば、事例で取り上げたような経営に水田10haの農地規模拡大の話が来たとしよう(図3)。仮に購入金額が10a当たり30万円とすると、3000万円の資金が必要となる。長期負債で先と同じ返済期間10年で年300万円無利子の条件で調達し、10haに小麦を作付けした場合を想定して検討してみたい。
小麦は10a当たりの利益は3万4750円だから、新規農地から347万5000円の利益増を見込む計算が成り立つ。返済に充てる300万円を差し引いた47万5000円が手元に残る。小麦の代わりに水稲や大豆を作付けした場合、収益が増えても返済金を支払った後に利益を残せない。しかも、機械装備を増やしたり、土地改良にお金をかけることも厳しいと考える。それは既存の長期負債が多いからだ。

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