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編集長インタビュー

農業変革の今、トマト加工食品メーカーが描く未来図

昆 マーケットの求める新たな価値について、ブランドと実績をすでにお持ちの御社がイノベーションし続けている姿がよくわかりました。


食と農、生産者と生活者のギャップを超える未来を

昆 ところで、お聞きしたいのが、御社はこれまでお話しされてきたように、優れた技術力をお持ちです。にもかかわらず、2001年の遺伝子組み換え食品反対キャンペーンを受けて、商品化を断念されました。皮肉を申し上げるわけではないんですが、その点が私どもからすると残念に思うのですが。

平岡 遺伝子組み換えでトマトの品種改良をやらないということについては、企業決定があったままで修正は現在しておりません。ただ、ブランドを持って商売をやっているウエイトが高い、当社のような食品メーカーは、民意に逆らうのが難しいという現実があるということをご理解いただきたいと思います。

 ただ、遺伝子マーカーは品種改良にも有効に使えるということは、はっきりしており、トマトの遺伝子マーカーに関する研究は続けています。

昆 カゴメさんは、広告を通じていわゆるスローフード運動を提案されました。その後、社会にそのコンセプトが一定程度根付きましたね。私自身はこの種の言葉があまり好きじゃないんですけどね(笑)。それはさておき、社会から評価を受けられるようになって、平岡さんが今思われることは何ですか?

平岡 日本は、食を囲む環境のバランスが悪いと思いますね。生活者も理屈ばかりで、実行が伴っていないといいますか。その理由は、食と農業が離れすぎているからですよ。都会には農業が身近にないことで、店頭でしか野菜が並んでいない環境になってしまって、自然と環境と調和するとか、親しみを覚えるとかいうことができなくなりました。日本は先進国と言われています。だけど、食育基本法という、世界のどの国にもない、変わった法律を作っているほどですからね。しかし、法律によって食をめぐる環境が解決できるわけではないじゃないですか。やはりこの問題を解決するには、食と農、消費者と生産者を近づけ、相互理解ができるようにしていくべきです。そういう状況が整う中で、遺伝子組み換えの是非や農業が多様な機能的側面を持つことを、生活者に感情論を排して理解してもらうということが、社会を挙げてやらなければいけないことなのではないかと思っています。

昆 農業界には農地法などの問題が確かにありますが、事業者が理想を追い、さらに現実が後追いする形で変わってきます。御社の掲げる共生とは、農業経営者と食品メーカーとが目線を揃えるということでもあり、本誌が一貫して主張してきたことです。その意味でも、今後も本誌および本誌読者とのさらなる強い関係を築き上げていきたいと思っております。本日はありがとうございました。

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