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特集

日本に子実トウモロコシ産業をつくろう


この交付金を餌にして、農家を主食用米生産から飼料米生産へ導き、コメ市況の高止まりを目指そうというものだ。しかし、コメの市況低迷の原因は、農家自身による過剰生産の結果である。にもかかわらず、農家の経営が危うくなると言って、飼料米を振興し、そのために過大な財政負担をする。しかも、消費者からすればそれはコメが高値維持されることである。消費者(納税者)はコメ農家のために二重の負担をさせられることになるのだ。消費者(納税者)目線でみればこんな政策がいつまで続けられるというのだろうか。
こうした政策的なコメ市況の高値維持は水田農業の将来のためにも望ましい方向とは言えない。SBS米(売買同時入札)の契約状況を見ても、円安と過剰供給のマーケットゆえにほとんど成約していない事態が続いている。日本米の競争力を高めていくためには、過剰な政策的関与を避けながらコメ市況は緩やかなペースで下方修正されていくことが望ましいのだ。
単に良質米であるということにとどまらず、顧客満足度が高ければこそ単価も高いコメを販売できる経営者はこれからも存在できるだろう。しかし、過剰供給のマーケットのなかでも、我が国のコメ作りあるいは水田経営の中核を担うべき事業的水田経営者たちを将来にわたっていかに守り、かつたくましく育てていくべきなのか。そのためには水田農業経営者たちが自らコメ作りのコストを下げ、しかも過度にコメに依存しない水田経営の形を定着させていく以外にはない。
本誌がこれまでにもたびたび紹介してきた水稲作への畑作技術体系の導入がその切り札である。高速作業が可能な畑作作業機で可能になる投下労働時間の減少によるコスト低減と、規模拡大の実現である。そして、同じ技術体系でこそ低コスト生産が可能な水田での子実トウモロコシの生産は水田経営者に大きな経営的可能性を与える。そうした経営改革を本誌は「水田農業イノベーション」と呼ぶ。

【トウモロコシを組み込んだ
畑作技術体系】

詳細は20ページ以降を参照していただきたいが、トウモロコシは他の穀物に比べ、作業時間が短く生産費も少なく、収量も他を圧倒している。飼料米のように、家畜の飼料を作るのに人間が食べる物よりコストも労働時間もかけて、しかも過大な財政負担をかけることを考えれば、子実トウモロコシでの転作は、経営的にも財政的にもまともな選択と言えるのではあるまいか。
経営力のある水田農家たちがこれに取り組むことによって、過大な財政負担を伴わずともコメの生産過剰(供給過剰)を防ぎ、むしろ大規模農家がコメ生産の経営リスクを減らすことが可能になる。

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