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【土門「辛」聞】
新春仮想対談・政権交代と政界再編が農業界に及ぼす影響
- 土門剛
- 第55回 2009年02月01日
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知己君 年初から政権交代と政界再編で話題沸騰だな。
寿丑君 民主党に政権が移れば、自民党農政族を裏で動かしていた農協組織の「権力操縦術」にも大きな影響が出てくる。その民主党は、マニフェストを読めば、自民党の農業政策と違って、どちらかといえば、零細規模農へ配慮する方に軸足がある。当面、政策のすり合わせに大きなエネルギーを費やさなければなるまい。
知己君 別の意味で大変だね。
寿丑君 昔懐かしい言葉を使えば、農水省、自民党、農業団体の三者による「55年体制」の崩壊かな。霞が関にとっては、まさに未体験ゾーンの領域に入っていくわけだ。しかも民主党が長期政権になる可能性は少なく、いずれ政界再編という事態も十分に想定できる。政界の大津波を受けても政策が揺るぎないようにするには、自分たちの足元をしっかりと固めておく必要がある。
知己君 そんな深謀遠慮もあって農水省改革チームを立ち上げて緊急提言をまとめたのだね。
寿丑君 それもそうだが、やはり直接のきっかけは、事故米スキャンダルで大臣と次官のダブル辞任だった。石破茂大臣は、防衛オタクでもあるが、もともとは農政族。防衛省だけでなく農水省のことももよく知っている。大臣が、このままではいけないと思い、改革を決断されたのだ。石破大臣は、谷津義男や西川公也のように全農に使い走りをさせられている農政族とは違って改革を志向する政治家の一人である。米政策改革大綱を策定する際に自民党内で立役者の一人だった。
知己君 悪評さくさくの麻生政権で石破さんを農水大臣に据えたのはヒット作だったね。
寿丑君 どんな政権でも一つぐらい見所があるものだ。石破さんの長所は、物事をよく理解して、目的と目標をはっきりと定め、直線的に解決しようという政策手法かな。
知己君 それが改革チームにも反映したのか。寿丑君課長クラスだけで編成したのも石破さんだ。局長クラスも入れた編成だと旧弊に流されるが、若手ならその恐れがないと考えたのであろう。チームを立ち上げて2カ月弱で緊急提言をまとめたよ。
知己君 大手メディアの評価はイマイチだったね。
寿丑君 緊急提言をまとめた翌日の紙面では「農政事務所廃止」だけを取り上げていたが、クラブ詰め記者では、改革チームの底流にあるもの、それが目指すものの理解は無理だ。
知己君 逆に業界誌記者の方がよく見ているよね。
寿丑君 米穀流通のミニコミ誌が伝えた「提言をまとめたチーム長の気分は吉田松蔭張りのものだったに違いない。自らの組織をこれほどまでに木っ葉微塵に断罪した文書は農商務省創設以来、いや明治維新政府以降、中央官庁としての自己批判としては画期的な快挙といえるかもしれない」と大絶賛した記事だね。
寿丑君 民主党に政権が移れば、自民党農政族を裏で動かしていた農協組織の「権力操縦術」にも大きな影響が出てくる。その民主党は、マニフェストを読めば、自民党の農業政策と違って、どちらかといえば、零細規模農へ配慮する方に軸足がある。当面、政策のすり合わせに大きなエネルギーを費やさなければなるまい。
知己君 別の意味で大変だね。
寿丑君 昔懐かしい言葉を使えば、農水省、自民党、農業団体の三者による「55年体制」の崩壊かな。霞が関にとっては、まさに未体験ゾーンの領域に入っていくわけだ。しかも民主党が長期政権になる可能性は少なく、いずれ政界再編という事態も十分に想定できる。政界の大津波を受けても政策が揺るぎないようにするには、自分たちの足元をしっかりと固めておく必要がある。
知己君 そんな深謀遠慮もあって農水省改革チームを立ち上げて緊急提言をまとめたのだね。
寿丑君 それもそうだが、やはり直接のきっかけは、事故米スキャンダルで大臣と次官のダブル辞任だった。石破茂大臣は、防衛オタクでもあるが、もともとは農政族。防衛省だけでなく農水省のことももよく知っている。大臣が、このままではいけないと思い、改革を決断されたのだ。石破大臣は、谷津義男や西川公也のように全農に使い走りをさせられている農政族とは違って改革を志向する政治家の一人である。米政策改革大綱を策定する際に自民党内で立役者の一人だった。
知己君 悪評さくさくの麻生政権で石破さんを農水大臣に据えたのはヒット作だったね。
寿丑君 どんな政権でも一つぐらい見所があるものだ。石破さんの長所は、物事をよく理解して、目的と目標をはっきりと定め、直線的に解決しようという政策手法かな。
知己君 それが改革チームにも反映したのか。寿丑君課長クラスだけで編成したのも石破さんだ。局長クラスも入れた編成だと旧弊に流されるが、若手ならその恐れがないと考えたのであろう。チームを立ち上げて2カ月弱で緊急提言をまとめたよ。
知己君 大手メディアの評価はイマイチだったね。
寿丑君 緊急提言をまとめた翌日の紙面では「農政事務所廃止」だけを取り上げていたが、クラブ詰め記者では、改革チームの底流にあるもの、それが目指すものの理解は無理だ。
知己君 逆に業界誌記者の方がよく見ているよね。
寿丑君 米穀流通のミニコミ誌が伝えた「提言をまとめたチーム長の気分は吉田松蔭張りのものだったに違いない。自らの組織をこれほどまでに木っ葉微塵に断罪した文書は農商務省創設以来、いや明治維新政府以降、中央官庁としての自己批判としては画期的な快挙といえるかもしれない」と大絶賛した記事だね。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
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