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【土と施肥の基礎知識】
土の有機成分
- 東京農業大学 名誉教授 全国土の会 会長 後藤逸男
- 第6回 2016年06月02日
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畑や水田に穴を掘ってみると、作土と呼ばれる表層15~20cmはその下層より色が黒い。この黒い物質が腐植と呼ばれる土の中の有機成分である。ただし、正確には有機物=腐植ではなく、腐植とは土壌有機物中の主要成分との表現が正しい。
多くの人が、土の色が黒いほどよい土で、土づくりの基本のひとつが腐植を増やすことと思っているようだが、どちらも間違いである。日本には、世界で最も色が黒い土「黒ボク土」が広く分布するが、自然の状態では酸性が強く、可給態リン酸が乏しいやせた土である。一方、同じような黒い土でも、ウクライナを中心とする中央ヨーロッパには「チェルノーゼム(黒土)」と呼ばれる世界で最も肥沃な土が分布する。すなわち、見た目だけでよい土かどうかを見分けることはできないが、多量の腐植を含む黒ボク土は水はけ・水持ち(土壌物理性)がよいので、酸性を改良して、適切な施肥管理を行なえば、肥沃な土になる。
腐植とは植物が腐ってできた物質と考えて間違いではなく、図1のようなプロセスでできる。植物が枯れて土に戻ると、土壌動物や土壌微生物の作用で植物中の有機物の大部分が二酸化炭素と水に分解され、リグニン・ポリフェノール・キノンなどのように構造が複雑で、微生物による分解を受けにくい成分が残る。それらが土壌中で加水分解や縮重合などの複雑な化学反応を経て腐植となる。
2.腐植の正体
腐植とは植物が腐ってできた物質と考えて間違いではなく、図1のようなプロセスでできる。植物が枯れて土に戻ると、土壌動物や土壌微生物の作用で植物中の有機物の大部分が二酸化炭素と水に分解され、リグニン・ポリフェノール・キノンなどのように構造が複雑で、微生物による分解を受けにくい成分が残る。それらが土壌中で加水分解や縮重合などの複雑な化学反応を経て腐植となる。
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後藤逸男 ゴトウイツオ
東京農業大学 名誉教授
全国土の会 会長
1950年生まれ。東京農業大学大学院修士課程を修了後、同大学の助手を経て95年より教授に就任し、2015年3月まで教鞭を執る。土壌学および肥料学を専門分野とし、農業生産現場に密着した実践的土壌学を目指す。89年に農家のための土と肥料の研究会「全国土の会」を立ち上げ、野菜・花き生産地の土壌診断と施肥改善対策の普及に尽力し続けている。現在は東京農業大学名誉教授、 全国土の会会長。
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