ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

土と施肥の基礎知識

土の有機成分


この腐植は粘土と化学的に結合して、腐植粘土複合体を生成する。この結合はたいへん強固で、切断するには土に水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)を加えて、煮沸する方法を用いる。そのようにして黒ボク土から抽出した腐植が写真1の左で、墨のように真っ黒だ。この黒い液に硫酸を加えて中和すると写真1の右のように、黒い物質が沈殿し、上澄は黄金色となる。黒い沈殿が腐植酸(フミン酸)、黄金色の液体がフルボ酸で、この両物質が腐植の正体である。
腐植酸は土の保肥力を高め、フルボ酸は鉄・銅・亜鉛などの金属元素と結合(キレート化)して、それらの移動を助ける働きを果たす。わかりやすく表現すると、腐植酸は土の胃袋を大きくし、フルボ酸は微量要素の運び屋ということになる。なお、腐植の成分にはフルボ酸、腐植酸のほかに、アルカリや酸処理によっても土から溶出しないヒューミンと呼ばれる物質も含まれる。

3.有機物を施用しても
腐植は増えない

植物の遺体が土壌動物と微生物により分解されて腐植となる過程で、まずはフルボ酸ができる。そのフルボ酸ができるまでには数百年、その後腐植酸になるまでには数千年の歳月を要することが知られている。ということは、有機物を施用しても、それらが腐植になるまでには途方もない時間が必要ということである。
農家にその話をすると、熱心な人は「そんなことはないはずだ。真っ黒な完熟堆肥を施用した土の腐植含有量を測定したら施用前より増えた」という。しかし、それは錯覚で、一般の土壌診断分析での腐植分析では、土をピロリン酸ナトリウムと水酸化ナトリウムという試薬で処理して、抽出された有機物の色の黒さを測定する。そのなかには堆肥中の黒色物質も溶け出るため、腐植含有量が見かけ上、増えることになる。
土づくりの基本のひとつが適切な有機物の施用であることは間違いないが、有機物を施用しなければならない理由は、腐植を増やすためではなく、腐植を減らさないためだ。フルボ酸や腐植酸が長期間にわたって土の中に存在するわけは、土壌微生物による分解を受けにくい、わかりやすく表現すると「まずくて、硬くて微生物が食わない」ためである。
農耕地では施肥や耕うんを行ない、農産物を生産・収穫するため、未耕地に比べて微生物数が多い。それらの微生物の多くが有機物を「えさ」とする従属栄養微生物であるので、有機物を分解してエネルギーを獲得する。もし、有機物を一切施用しないで、化学肥料だけで営農を続けると、土の中で微生物のえさが不足して飢餓状態となる。

関連記事

powered by weblio